レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
3・わたしが側室……?
――わたしは混乱していた。陛下とはまだ,ちゃんとした面識はないはずで。そんなわたしが側室として見初められた理由が,まったく分からなかったのだ。
……いや,もしかして面識はあったのかしら?その心当たりはなくもないけれど。――まさかアリサが言っていた通り,レオン様が実は陛下だったとか?
「どうしたのです,イライザ?あまり嬉しそうではないようですが」
「いえ……。あまりにも突然のことで,思考がついて行かなくて」
怪訝(けげん)そうに眉をひそめられたナタリア様に,わたしは弁解する。
嬉しくないわけではない……と思う。もしもアリサの言う通りなら,わたしは"レオン"と略称で名乗られた陛下と既に恋に落ちていたことになる。それで陛下がわたしを側室に選んで下さったのなら,わたしは陛下の申し入れをお受けするつもりだ。
でも,もしもレオン様と陛下が別人だったら……?陛下の申し入れを,城の使用人でしかないわたしがお断りするわけにはいかない。だとすれば,他に想い人がいるうえで陛下に身を任せなければならないということ。
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