レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
わたしがアン様のお部屋の前で,いつまでも入室をためらっていると……。
「遅かったじゃない,イライザ。何してるの?入らないの?」
先に入室していて,仕事の準備をしていたアリサが不思議そうに声をかけてきた。
「……うん,入るわよ。ごめんね,ちょっとナタリア様に引き留められて」
「ナタリア様に?――あっ,もしかして陛下の側室にあんたが内定したって話?」
「アリサ……,知ってたの!?」
わたしは心底驚いた。あの話が,女官の中のトップであるナタリア様だけではなく,わたしと同じいち女官見習いのアリサの耳にまで入っていたことに。
「ええ,もうお城全体の噂になっているわよ。『陛下のお心を射止めた女官見習いとは,どんな娘だろう』って。――既にアン様もご存じのはずよ」
「アン様も?それで,どんなご様子だとか聞いてない?」
仕事の準備をしながらも,わたしは気もそぞろだった。もしもアン様がこの事実にご立腹だったら,わたしはこの先アン様に合わせる顔がない。
「遅かったじゃない,イライザ。何してるの?入らないの?」
先に入室していて,仕事の準備をしていたアリサが不思議そうに声をかけてきた。
「……うん,入るわよ。ごめんね,ちょっとナタリア様に引き留められて」
「ナタリア様に?――あっ,もしかして陛下の側室にあんたが内定したって話?」
「アリサ……,知ってたの!?」
わたしは心底驚いた。あの話が,女官の中のトップであるナタリア様だけではなく,わたしと同じいち女官見習いのアリサの耳にまで入っていたことに。
「ええ,もうお城全体の噂になっているわよ。『陛下のお心を射止めた女官見習いとは,どんな娘だろう』って。――既にアン様もご存じのはずよ」
「アン様も?それで,どんなご様子だとか聞いてない?」
仕事の準備をしながらも,わたしは気もそぞろだった。もしもアン様がこの事実にご立腹だったら,わたしはこの先アン様に合わせる顔がない。