レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
「え……っ!?ど,どうして分かったの!?」
わたしは動揺(どうよう)しすぎてやたら挙動(きょどう)不審(ふしん)になってしまう。
「あんた,分かりやすすぎるのよ。思ってることがすぐ顔に出るんだから。――それはともかく,よ。昨日も言ったけど,"レオン"って"レオナルド"の略称でしょ?やっぱりあたしが言った通りなのよ,きっと」
「そう……なのかしら」
もしもそうなら,わたしがこのお話をお断りする理由はなくなるのだけれど……。
「だとしたら,わたしの初恋は陛下,ってことになるのよ。どうしよう?」
「ええっ?いいじゃない!これ以上の良縁(りょうえん)はないわよ」
……うん,きっとそう。女性なら誰しも,一度は夢に見る。国王や皇帝に(とつ)ぐというおとぎ話のようなご縁を。
わたしだって,憧れなかったわけじゃないけれど。いざそれが現実として自分の身に()りかかろうとしていると,憧れよりも恐ろしさが(まさ)ってしまうものだ。
そんな大役(たいやく),果たしてわたしに務まるのかしら,って……。
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