レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
最後に兄さんが言ったことの意味が(つか)めず,わたしは間の抜けた声を()らした。
「何でも,よく城を抜け出しては,お(しの)びでレムルの町をウロウロしてるらしい」
"レムル"とはこの国の帝都(ていと)であり,レーセル城の城下町でもある。
「……はあ。でも,皇帝陛下がそんな自由人で,この国は大丈夫なの?」
「まあ,大丈夫だろう。大臣がしっかり者だからな。陛下が外を出歩けるほど,この国が平和になったと思えば」
「……そうかもね」
兄さんみたいに前向きに考えれば安心かも。猫だって,天敵(てんてき)がいなければ路上をゴロゴロしていられるんだもの。それとほぼ同じ。……ん,ちょっと違う?
要するに,陛下の御身(おんみ)もこの国も安泰(あんたい)だってことだ。
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