命の対価
 そして慣れた手つきで紙コップを机に置くと、完璧な営業スマイルで「カレーはおいくつですか?」と尋ねてきた。

 雅也と裕貴、順番に目が合う。

 誰が言うのか探り合いだ。

「……み、3つで」

 ぎこちなくそう答える俺の事などウェイトレスの女子は全く気にならないようで、そのままの笑顔をキープしたまま「600円です」と言った。

 どうやら支払いはここでこのタイミングでするみたいだ。

 俺たちは1人200円ずつ綺麗に出した。

 お金を受け取ったそのウェイトレスは「カレーすぐお持ちします」と言って去っていった。

「裕貴ってホント見かけによらず女子が苦手だよな」

 雅也の言葉に裕貴が口に入れたばかりの水を吹きそうになる。

「う、うるせぇ! 女子はそういうギャップに萌えるんだろ!?
──っていうか、苦手じゃねぇから!」

 それで萌えるのは2次元だけだと思うが。

 でもまぁ、裕貴がただのチャラ男だったらきっと俺はこんなに仲良くしていない。

 見た目は確かにチャラ目の高校生って感じだが、実は結構優しくて思いやりがあって、それは女子に対してなら尚更で。
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