命の対価
 俺たちがカレーを食べている間にも次々と教室の中の人が入れ替わっていく。

 教室の隅の方でも簡易的に仕切られたスペースへウェイトレスが盛んに出入りしている姿が見える。

 調理室を使っているのは俺らのクラスだけなので、おそらくその仕切りの中でレトルトのカレーを使っているのだろう。

 俺たちのクラスは焼きそばのレシピに1番力を入れたが、このクラスは早さと接客の丁寧さが売りのようだ。

 無論、このクラスがカレーに手を抜いていると言いたいわけではない。

 さすがは日本の技術と言ったところか、温めたばかりのレトルトカレーは文化祭で食べるには十分すぎる味だった。

 少し後に食べ始めた2人も、俺が食べ終わるのとあまり変わらない時間で食べ終わった。

「まだ食べてすぐだけど、タピオカ買ってそのまま軽音楽部行くか」

 眼鏡を軽く直しながら凛々しい表情で言うその姿が、数分前に苦しんでいた姿を引き立てているようで俺は1人で吹き出しそうになった。

 ──どちらかと言うとこちらのギャップの方が萌えそうだ。
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