命の対価
 初めての文化祭であんなテンションの高い年下を接客するなんてお気の毒に、と見ず知らずの女子を心の中で労う。

 この光景を見る限り、俺は料理が得意ではなかったにせよ、接客を選ばなくて正解だったと、役割決めをした過去の自分を褒める。

「タピオカミルクティー1つで」

 まだ中学生のあどけなさが残っている彼女に、俺は精一杯大きな声で聞こえるように言った。

「あっ、かしこまりました!」

 俺の注文を聞き取った彼女はパッと笑顔を見せ、「ミルクティー」と丁寧に書かれた紙を渡してくれた。

「あちらで、交換してください!」

 さっきよりも聞き取りやすい声で言いながら、今ちょうど雅也がタピオカを交換している場所を指さす。

 俺は最後に軽く会釈をして、タピオカを受け取りに行った。

 気だるげそうな男子にさっきもらったばかりの紙を渡す。

 俺はそんなに身長が低いわけではないのだが、それでも今目の前にいる男子の方が俺よりも少し身長が高くて、なんだか年下には見えなかった。
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