命の対価
「どうぞ」

 机越しにタピオカミルクティーとストローを渡され「ありがとうございました」という少し間延びした声を背に、出口と書かれたドアへと歩いた。

 しかし、そのまま素直に教室の外に出ることはかなわず、丁度タピオカを堪能し終わった女子グループが俺の目の前に現れた。

 教室を出ようとはしているみたいだが、広がって話しながらゆっくり歩いているため、抜かすことが出来ず、同じスピードで後ろをついて行く羽目になった。

 一定の間隔を保ちながら無言で歩き、ようやく廊下に出る。

 廊下の空気がおいしく感じるほど、教室の中の空気は俺にとってあまりいいものではなかった。

 2人はどこにいるのだろうかと、辺りを見回す。

 すると1つ隣の教室の前でタピオカを飲んでいる2人が見え、俺はタピオカを一口だけ飲んでから歩き出した。

「こうちゃん……」

 知らない人たちの会話が飛び交っている中、俺にはその言葉だけなぜか大きく聞こえた。

「こうちゃん!」
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