命の対価
はじめまして
 それから俺たちは見たかった軽音部の演奏を見ることができ、他に回りたいと思っていた場所も行くことが出来た。

 文化祭終了15分前の放送が流れ出し、遊びに来ていた人達は次々に帰り始める。

 昇降口に向かう人達と一緒に、俺達もそろそろ教室に戻ることにした。

 雅也も裕貴も文化祭をそれなりに楽しんだようで、とても満足そうだった。

 俺ももちろん楽しかった。

 でも頭のどこかで少しだけ別のことを考えていて……

 昇降口で俺の心を乱していたそれの正体を見つけ、俺は走り出していた。

「お、おいっ、幸介!?」

「ごめん、少し頼んだ!」

 焦る雅也に一瞬だけ目をやり、短く返事をする。

 雅也なら多分察してくれるだろう。

 俺は諸々のことを雅也に任せ、もう靴に履き替えて帰り始めている彼女を追いかける。

 手間だが俺も靴に履き替え、校門を出る前までになんとか声をかける。
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