ちっちゃな幸せ
プロローグ
「…ふぅ」

粋香(すいか)は、トイレの中でため息をつく。

手元には、妊娠検査薬が握られている。
その妊娠検査薬には、妊娠を意味する線がくっきりと残っている。

結婚をしてからは、避妊したり、しなかったりしていたから、当然の結果だ。

「すいちゃん、大丈夫?」

凛月(りつき)が心配そうに声を掛ける。

「うん、大丈夫。
今、出るね」

凛月に声を掛けると、粋香は覚悟を決めて、トイレのドアを開けた‐。

「りっちゃん…、妊娠しちゃった、わたし」

粋香の言葉に、

「やった~!」

子ども好きの凛月は喜んでいる。

「…すいちゃん、どした?」

凛月の言葉に、ハッと顔を上げ、粋香は無理して作った笑顔を見せる。
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