好きになってもいいですか?
冬も間近な秋の頃。
高校1年の私ーー芹沢花音は制服に袖を通す。
「ふぁ~あ......。つい夜更かししちゃったなぁ......」
部屋で1人呟きながら、学校に向かう準備をする。
制服を着終え、バッグに物を入れ、ふと机の上に置いていた1冊のマンガを手に取った。
高校生の男女二人の恋愛模様を描かれた、よくある王道の少女マンガだ。
《あー、早く続きが読みたいっ!》
手に取ったマンガを抱え、私は心の中で止まらない切望を叫ぶ。
実を言うと、この少女マンガを含め、ゲームもしていて夜更かしをしてしまったのだ。
私はマンガもゲームも大好きな......所謂、オタクである。
この事実を知っているのは親友の一ノ瀬夏美と家族だけ。学校の他の皆の前では大人しくしていて、この事実を秘密にしていた。
《知られたら絶対引かれちゃうよね......》
ふぅ、と軽く息を吐くと、スマホにラインが届く。着いた、と。夏美ちゃんだ。
私はマンガを本棚に戻し、スマホをバッグに入れて玄関へと急ぐ。
「行ってらっしゃい。花音」
「行って来まぁす」
丁度リビングから顔を出した母にそう言われ、靴を履き終えてドアを開けながら返事をした。