好きになってもいいですか?
何だろう。頬が熱い。

いや、それよりもーー。


「上杉くんみたいな優しくて容姿も完璧な人は、私みたいなオタクで平凡な人間とは別次元と言うか何と言うか......」

「何それ。好きなら好きで良いんじゃないの?」

「......気には、なってるよ?」

「うん。知ってる」

「えっ?」


あまりにあっさりと頷かれて、バッと顔を上げてみると、夏美ちゃんの表情は微笑みを浮かべていた。

流石は親友......と言うべきだろうか。

《それとも、私が分かりやすいだけなのかな?》

上杉くんの事は入学して間もない頃から、まるで王子様のようだと思って気になっていた。

でも、すぐに自分とは別世界のような人だと思い、挨拶が出来るだけで良いと思った。

上杉くんの周りには、男女問わず、常に人が集まっている。

とてもじゃないが話し掛ける勇気もない。

だからこそ、彼から声を掛けられる朝の挨拶は、唯一の話すチャンスで至福の時間だったのだ。

今朝も挨拶をしてくれたので返そうと思ったのだが、見事に松永さんに取られてしまった。いや、取ったとは語弊があるだろうか。

そもそも、上杉くんと私は仲良しという訳でもない。それを言うなら、松永さんの方が余程仲が良い。

《しかも、お洒落な松永さんと容姿端麗な上杉くんって、お似合いなんだよね......》
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