生贄の花嫁      〜Lost girl〜
――風呂場――

ポチャン

全身を洗い終え、髪の毛を束ねて湯船に浸かる。

お風呂は落ち着く。体に纏わりついた恐怖も流れていくみたい。水面には薔薇の花びらが浮かんでいるから香りもいい。
ただ、いつもはメイドが一緒にお風呂にいたから1人であることが落ち着かない。だからと言って彼らを呼ぶわけにはいかないけれど…。


「のぼせないうちにあがろう。」


ガチャ

ん?ガチャ…?

音がした方向を見るとゆっくりとドアが開いた。

「あら、ゴメンナサイ。」
「キャ~!」

あわてて湯船に浸かって身体を隠す。彼もあわててドアを閉めた。

「入ってるなんて思わなくて…。アタシ、何も見てないから!」


ドタドタと泰揮クンがでていく音が聞こえる。素早く湯船からあがり、着替える。


また誰かに会わないよう、いそいそと風呂場を去った。
< 10 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop