生贄の花嫁      〜Lost girl〜
結局…いろいろなことを考えていたら朝になってしまった。隣ではすやすやと眠っている琉生くん。


「女の子みたい…可愛いな。」



琉生くんのおでこに触ろうとしたとき廊下から激しい音が聞こえてきた。



ガチャ


「花月チャン!」
「泰揮クン!?」


「いいから来てちょうだい。大変なのよ。」


琉生くんのことをたたき起こす泰揮クン。いつもならもっと優しく起こしてるのに……。



「琉生クン、起きてちょうだい。」

「ね~む~い…。」

「アナタに手紙が来ているのよ。」


「僕に…手紙…?」
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「一体何があったんですか…?」

「今朝、この手紙が届きました。」




そう言われ差し出される便箋。まるで血で書かれたような赤い色で文字が綴られていた。




《拝啓 親愛なる貴公子諸君
私の僕がお邪魔をしているようですね。近々迎えをよこすので私のもとにかえしていただきたい。そうしていただければ莫大な資金を送らせていただきます。しかし、もし返していただけないならば…》


「大切な物をいただきます…?」


「黒鬼院様だ!僕のことをお許しくださったんだ!」

「黒鬼院…?誰だそいつは。」

「黒鬼院様は僕にこの体をくれた主様なんだ。」



黒鬼院様…私を攫うよう命令した人だよね…。琉生くんに酷いことをしたのに取り戻しに来たの…?



「琉生くんは…屋敷に帰るの…?」

「うん。いつまでもここにいるわけにもいかないし、逆らえないから……。」


「花月、どうかしたか…?」


「琉生くん…ずっとここに住まない…?」
「え…?」

「花月、何言ってるの…?」


「だっておかしいじゃないですか。琉生くんを追い出したのに今更返してほしいだなんて……きっと、琉生くんは帰ったらまた酷いことされる…。そんなの嫌だよ…。」


「花月チャン…。」


「花月ちゃん、ありがとう。でも、僕は戻らなきゃ…。きっとそこで死ぬんだとしてもそれが僕の運命なんだよ。」

「琉生くん…。」




「じゃあ、今日が最後の晩餐になるから豪華にするわよ~!」


「まだお昼ですけどね…。」
「本当、いつも細かいんだから。」



「ああ、これで清々する。子供のお守りもしなくていいし花月も僕のもとに戻ってくるし。」

「花月ちゃんにしか育ててもらった記憶ないもん。あと泰揮君のご飯。」
「可愛くないやつ…。」




「琉生…あとで餞別やる。紅茶でいいか?」

「聖さんは本当にいい人だね、誰かさんとは大違い。」
「へえ…?聖あんまり甘やかすのはよくないと思うよ?」

「あ、おじさんには僕の可愛さ分からないよね。」

「おじさん…?お前なんかおむつとれたばかりの幼稚園児のくせに。」



前から思っていたけど奏と琉生くんって少し似ているかも。


案外仲良くなれそうかも……?
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