生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「あ、花月チャン…。」

気のせいか泰揮クンの顔が少し赤く、無意識に私も恥ずかしくなってしまう。

「コーヒー牛乳、飲む?」
「あ、えっと…いただきます。」

泰揮クンからコーヒー牛乳とやらを受け取る。コーヒー牛乳が火照った体をゆっくりと冷ましてくれる。

「少し顔色がよくなったわね。体調はいい?」
「まだちょっとわかりません…でも、少しは…楽になりました。」

「夕食の時は怖い思いをさせちゃってごめんなさいね。アタシたち、血を見ると本能的に体が反応しちゃって。」
「あの時は少し怖かった…ですけど、お話してみて少し安心しました。吸血鬼だからって怖いだけじゃないんだって。」

「もう、気遣いさんね♡こわーい!とか、きもーい!とか言っていいのよ。」
「えっと…きもーい…?はよく分からない…ですけど…怖いだけじゃなくて…温かさがあるから……ホッとできます。」

「そうね…。私もあの子たちとこの屋敷が大好きよ。血は繋がっていなくても大切な家族。一緒に暮らして笑って泣いて、たまには怒って…でも、嫌いになんてならないわ。花月チャンの笑顔もいつか見せてほしいわね。」



「悠夜~、俺のシャツ知らねえ?」
「さきほど聖がアイロンかけてましたよ。」
「サンキュー」

「ほらほら、年頃の女の子の前にパンツ一丁で来ないの。」
「お前は俺のお袋か。」

「あら、アタシは皆のお母さんよ。悠夜がお父さんね。」
「くだらない茶番に私を巻き込まないでください。」

「それはこっちのセリフだ。こんな堅いのが父親とか無理。」

「ほう…貴方は少し語彙力と教養を身に着けたほうがいいですね。」


「あ、あの!私は…部屋に戻ります。コーヒー牛乳ありがとうございました。皆さん、おやすみなさい…。」


「おやすみ~。」
「腹出して寝るなよ。」
「おやすみなさい。よい夢を。」


この屋敷は優しくてとても温かい。


今すぐには無理でも、きっといつか…家族だと思える日が来るといいな…。
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