生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「ここが私の部屋でそっちが聖さん、こっちは劉磨さんの部屋。向かいが奏と悠夜さんの部屋で奥が泰揮クンの部屋と研究室。」




「2人は俺の部屋にくるか…?それとも空き部屋の掃除するか…?」

「男の人3人で1部屋っていうのは狭いよね…よし、掃除しよう。どこの部屋なら使えそうかな。」


「僕は花月ちゃんの部屋に泊まるから関係ない…」
「琉生、私たちと同じ部屋ですよ…?わかりましたか?」
「……は~い…。」



かくして大掃除がはじまった。どの部屋にするか選ぶ段階でもほとんどの空き部屋が埃をかぶっていて汚かった。



「本当に綺麗になるのかよ…この部屋。」
「口よりも手を動かしなさい。」


前から思っていたけれど、橙さんの話し方は悠夜さんに似ている。いつも言葉が丁寧であまり子供らしくない。




「どうしました、私の顔に何かついていますか?」

「あ、いや…言葉遣いが丁寧だなと思って…。」


「ああ…この話し方のことですか。私の両親は外資系の仕事についていて人とのかかわりが多かったので自然と身につきました。」



「子供らしさがねえよな。」
「貴方が幼いだけでは…?敬語が使えないと将来困りますよ。」
「説教すんな。頭が堅いな。」
「2人はいつもこういう感じなんだよ。」


「仲がいいんだね。」

「仲がいいわけではありません。」
「誰がこんなやつ…。」

「男の友情…。」

「誰がそんなの…」


「心を許せるから言い合えるんだと思うよ。まだまだ若いんだから友達を大切にしてね。」


「僕は花月ちゃんに心を許してるから、花月ちゃんを大切にする。」
「琉生くんもありがとう。」
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「ふう…掃除終わったね。」


「このごみの山は俺が持って行っておくから休んでろ。」

「うん、ありがとう。」




掃除が終わり部屋を出たとき廊下で劉磨さんと鉢合わせた。



「結局泊めることにしたのか。聖もか?」

「花月の助けになりたいから…。」


「助け…ね…。そこ、どけよ。奏の部屋に用があるんだけど。」




今までにないくらい劉磨さんの視線が…口調が冷たく感じる。明らかに怒っている声で何とも言えないオーラを身に纏っている。


「あ…ごめん…。」


「花月、お前男好きだったんだな。」
「え…?」

「好きでもないやつ部屋に泊めるかよ…。」


「好きとか嫌いとか言っている場合じゃないでしょ。困っている人がいたら助けないと…。」
「助ける…?自分を攫ったやつらをか?俺なら絶対そんなことしない。」
「じゃあ見捨てろっていうの!?」
「ああそうだよ。今のお前は俺らが好きなお前じゃねえよ。」

「劉磨さんたちが好きな私って何よ!?私は私でしょ。」



しばらく劉磨さんとの言い合いが続いた。別にこんなことを言いたいわけじゃない。ただ…ただ少しでもいいから理解してほしかった。



ガチャ



「うるさいな~。」

「奏…。」


「こんな夜遅くに何やってるの?喧嘩?」

「いや、ただちょっともめただけ。」


「そう…ならいいけど。あ、劉磨、さっき頼んだやつできた?」

「ああ。だから今持っていこうとしたらばったり出くわしちまったんだよ。」


「まあ、部屋入ってよ。そこの3人も僕たちに迷惑かけないでね。いくら花月がいれた客でも居候なんだから。」



「はい、心得ております。」




パタリと奏の部屋のドアが閉まる。劉磨も奏も少し話し方がきつかった気がする。

そんなに……



「俺ら嫌われてるな。」


「いや、そんなことは…。」




「気を使っていただかなくて大丈夫です。私たちにいてほしくない意味もなんとなく分かりますので。」


「とりあえず、部屋で休んでろ。何か必要なものがあったら言ってくれ。花月、手伝ってくれるか……?」
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