生贄の花嫁 〜Lost girl〜
―花月side—
真実に衝撃を受け嘆く柚さん。これで皆への感情が少しでも変わるといいんだけどな。
「今もまだ皆は柚さんのことを待っているんです。だから…もうこんなことやめましょう。今ならまだ…皆のところに戻れます。」
「……できないわ。もう今の私は…皆のもとに戻れないくらいの罪を背負っている。戻っても昔みたいには……。」
「そんなの分かりません。だから……」
そのときだった。たどり着いた部屋の奥から唸りが聞こえ始めた。
「う…ああ…お前はわしを裏切らないよな…キズ…?」
「黒鬼院様……!」
あれが黒鬼院様……顔は見えないけど威圧的なオーラが感じ取れる。
「お前もわしを裏切るのか……?あいつらのように……。」
「ですが……。」
「わしに口答えをするのか…?お前を生かしてやっている私に。」
「い、いえ……。」
「そうだよね…お前はいい子だ。」
どんどん顔色が青ざめていく柚さん。それほどまでにこの人は恐ろしいの…?
「ゆ、柚さん、しっかりしてください。皆のところに戻りましょうよ。もうこれ以上罪を重ねないで…。」
「キズ……お前はわしの可愛い可愛い下僕だ。わしに背くことなどしないよな…?」
「………。」
「もういい。」
パチンッ
黒鬼院さんが指を鳴らすと2人の仮面をつけた人たちが柚さんをどこかへ連れて行こうとした。
「柚さんを放してください!」
いくらその人たちを食い止めようとしても全然力が及ばない。
「キズ…お前にはがっかりだよ。わしのことを…命令を深く教え込まなきゃいけないのう。連れていけ。」
「柚さん!」
目の前から3人の姿が消える。
また瞬間移動…?
「さあ、白梨花月さん。お話をしようか…わしと。」
柚さんたちがいなくなり残された黒鬼院さんと私。この人は一体何を考えているの…?
「まずは、わしの屋敷へようこそと言っておくかのう。前に連れてきたときには話をする前に逃げられてしまったからな。」
「なぜ…私なんですか…?」
「花月さんは特別な血液をお持ちのようだからな……是非ともわしに力を貸してもらうためじゃよ。何、痛いことは何もせん。」
「琉生くんたちから聞きました。あなたの目的は吸血鬼の長になることと……」
「知っているとは話が早い。そう…わしは吸血鬼の長になることを望んでいるんじゃよ。6年前、吸血鬼協会は人体血液培養の実験に成功したのに、たくさんの犠牲者が出たということで世間は受け入れてくれなかった。そのせいで当時の代表取締役会長であった紫道実彦は自殺……その後を継いだ取締役も結果を出せず衰退していった。だが…わしは諦めなかった。幾度も幾度も後を継げるようにキャリアを積んだ。それなのに……わしには取締役になる資格がないと御前はわしを突き放した。わしは憎んだ。純血種であるわしがなぜこんな惨めな思いをしなくてはいけないのか。そして確信した。奴らの上に立つには完全なる吸血鬼となり長にならなくてはいけないことを…。」
黒鬼院さんの手元にあったと思われるガラスのコップが割れる。怖さや恐ろしさではなく唯々この老人の姿が哀れに見えた。
「長になるには強い力…不死身と言われる永遠の命が必要だ。それがお前さんの血液だけで手に入る。さあ…わしにお前さんをおくれ。」
「ご自身の欲のためだけに女性を攫っていたのですか…?」
「ああ。じゃが、どの女もダメだった。わしの体を完全なものにすることはできんかった。情けない下僕をもったものだ。挙句の果てにはわしを裏切りお前さんの味方となってしまった。」
「1つ…お聞きしたいことがあります。」
「何かな…?」
「もし私があなたに血を捧げたら…琉生くんたちや柚さん…皆を傷つけないと約束してもらえますか…?」
「それは肯定的と捉えてよろしいのかな…?」
「私の願いを聞いてくださるのならば……。」
「そうかそうか…そんなに覚悟を決めてくださっているならわしから1つプレゼントをやろう。」
「プレゼント……?」
真実に衝撃を受け嘆く柚さん。これで皆への感情が少しでも変わるといいんだけどな。
「今もまだ皆は柚さんのことを待っているんです。だから…もうこんなことやめましょう。今ならまだ…皆のところに戻れます。」
「……できないわ。もう今の私は…皆のもとに戻れないくらいの罪を背負っている。戻っても昔みたいには……。」
「そんなの分かりません。だから……」
そのときだった。たどり着いた部屋の奥から唸りが聞こえ始めた。
「う…ああ…お前はわしを裏切らないよな…キズ…?」
「黒鬼院様……!」
あれが黒鬼院様……顔は見えないけど威圧的なオーラが感じ取れる。
「お前もわしを裏切るのか……?あいつらのように……。」
「ですが……。」
「わしに口答えをするのか…?お前を生かしてやっている私に。」
「い、いえ……。」
「そうだよね…お前はいい子だ。」
どんどん顔色が青ざめていく柚さん。それほどまでにこの人は恐ろしいの…?
「ゆ、柚さん、しっかりしてください。皆のところに戻りましょうよ。もうこれ以上罪を重ねないで…。」
「キズ……お前はわしの可愛い可愛い下僕だ。わしに背くことなどしないよな…?」
「………。」
「もういい。」
パチンッ
黒鬼院さんが指を鳴らすと2人の仮面をつけた人たちが柚さんをどこかへ連れて行こうとした。
「柚さんを放してください!」
いくらその人たちを食い止めようとしても全然力が及ばない。
「キズ…お前にはがっかりだよ。わしのことを…命令を深く教え込まなきゃいけないのう。連れていけ。」
「柚さん!」
目の前から3人の姿が消える。
また瞬間移動…?
「さあ、白梨花月さん。お話をしようか…わしと。」
柚さんたちがいなくなり残された黒鬼院さんと私。この人は一体何を考えているの…?
「まずは、わしの屋敷へようこそと言っておくかのう。前に連れてきたときには話をする前に逃げられてしまったからな。」
「なぜ…私なんですか…?」
「花月さんは特別な血液をお持ちのようだからな……是非ともわしに力を貸してもらうためじゃよ。何、痛いことは何もせん。」
「琉生くんたちから聞きました。あなたの目的は吸血鬼の長になることと……」
「知っているとは話が早い。そう…わしは吸血鬼の長になることを望んでいるんじゃよ。6年前、吸血鬼協会は人体血液培養の実験に成功したのに、たくさんの犠牲者が出たということで世間は受け入れてくれなかった。そのせいで当時の代表取締役会長であった紫道実彦は自殺……その後を継いだ取締役も結果を出せず衰退していった。だが…わしは諦めなかった。幾度も幾度も後を継げるようにキャリアを積んだ。それなのに……わしには取締役になる資格がないと御前はわしを突き放した。わしは憎んだ。純血種であるわしがなぜこんな惨めな思いをしなくてはいけないのか。そして確信した。奴らの上に立つには完全なる吸血鬼となり長にならなくてはいけないことを…。」
黒鬼院さんの手元にあったと思われるガラスのコップが割れる。怖さや恐ろしさではなく唯々この老人の姿が哀れに見えた。
「長になるには強い力…不死身と言われる永遠の命が必要だ。それがお前さんの血液だけで手に入る。さあ…わしにお前さんをおくれ。」
「ご自身の欲のためだけに女性を攫っていたのですか…?」
「ああ。じゃが、どの女もダメだった。わしの体を完全なものにすることはできんかった。情けない下僕をもったものだ。挙句の果てにはわしを裏切りお前さんの味方となってしまった。」
「1つ…お聞きしたいことがあります。」
「何かな…?」
「もし私があなたに血を捧げたら…琉生くんたちや柚さん…皆を傷つけないと約束してもらえますか…?」
「それは肯定的と捉えてよろしいのかな…?」
「私の願いを聞いてくださるのならば……。」
「そうかそうか…そんなに覚悟を決めてくださっているならわしから1つプレゼントをやろう。」
「プレゼント……?」