生贄の花嫁 〜Lost girl〜

―柚side—

「本当…皆のこと怨んでごめんね。私……間違ったことしてた。」

「柚は悪くない。僕たちがきちんと言えばよかったんだ。」



「お前の名前……柚だったんだな。」
「そういえば輝石たちには伝えてなかったね。私の本当の名前は立花柚。もともとこの屋敷で皆と住んでいたの。」

「つまり……貴女も生贄の花嫁だったのですか…？」

「う～ん……一応そうなのかな…？私は日常から逃げ出したかったからこっちに来たようなものなんだよね……。」

「僕…キズちゃんの時の姿よりも今の姿のほうが可愛くて好きだな。」

「琉生……。相変わらず可愛いこと言うんだから。」





「柚……これを貴女に渡しておきます。」



いきなり差し出された1枚の封筒。中を見ると戸籍謄本と書かれた書類が入っていた。



「これは……？」

「貴女の戸籍謄本です。貴女のDNAを調べるにあたり使用させていただきました。貴女は……立花家の養女だったのですね。」


「そう……。」


「貴女の実の母親は下層吸血鬼だったようです。貴女を身籠る前に関わりがあった男性が純血種の吸血鬼だったようで、その男性に下層吸血鬼にされていたようです。下層吸血鬼に陥ってしまった母親は何度か殺人を犯していたようですがそれを助けようとしたのが後に出会った柚さんの実の父親に値する人間です。なにより彼は研究家だったようで貴女の母親を人間に戻すために研究に尽くしていたようです。そこで下層吸血鬼を人間に戻す方法を発見した。それは……」


「人間と性的行為を行い赤子を産むこと。そうすれば吸血鬼のDNAがすべて赤子に移る。」

「やはり知っていたのですね。」



「お母さんを助けるためにお父さんは私を作ったと昔聞いたの。もちろん私が生まれたことでお母さんの中にあった吸血鬼のDNAは移ったはずだった。でも……お母さんの中のDNAは消えていたけど、私のDNAを何度調べてもその吸血鬼のDNAを発見できず私の体は人間のままだった。お父さんは…お母さんも私も人間の体であると喜んでいた。腑に落ちないところはあったけど2人と生きていけるならそれでいいと思っていた。でもある晩、交通事故で両親は急逝。当時10歳だった私は立花家に引き取られるようになった。それからそこで生活をしてあの晩皆と出会った。皆と暮らしていて、柚は"人間の女の子"。そう言われるたびに自分は本当に人間であるのか不思議に思っていた。もしかしたら今DNAが作用するのではないか、下層吸血鬼になるかもしれない、そうおもっていた。でも、血を飲んで美味しいと言ってくれて、ああ、まだ私は人間でいられているんだって安心もしたし不安もあった。だから……劉磨と契りを結ぶとき、私はこれで完璧に吸血鬼になれると思った。でも……そこで私の中に入っていたDNAが作用してしまった。」


「聖、どうかしたか…？」

「いや、さっき、泣きそうな顔で花月が部屋を出て行ったから気になって……。」


「俺が見てくる。」



「待って。花月、もしかしたら……。」