生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―奏side—

「花月、悪かった……俺…自分のことしか見えてなかった。お前を1人にして…ごめんな。」



昨日はあんなに怒っていた癖になんでそんな簡単に自分に非があったって認められるの……?そんなに自分は善い奴だって花月に思われたいの…?


「ううん……大丈夫。皆がいつもと違ったから……ちょっと戸惑っちゃっただけだから……気にしないで。」

「花月、喧嘩の原因を詳しくは教えられない。でも……お前をもう1人にはしない。だから泣くな。」

「泣いてなんか……ないよ。本当に大丈夫だから。」

「花月、帰ったらお茶会しよう。お前の好きな紅茶淹れてやる。」


そうか……僕が素直に謝れないのは自分のことしか考えてなかったからだ。僕は…花月に愛してるって言ったのに、その気持ちを利用して自分で満足していただけだったんだ。


今だってそうだ。つまらないプライドが邪魔をして、自分が悪いことを認めたくなくて花月にさえ謝ることができない。聖は…最初から嘘も利用もしていなかった。僕のために怒って…花月のために謝っているんだ。自分へのメリットなんか考えないで…ただ相手のことだけ考えて……


「………。」

「劉磨さん…私、いつもの劉磨さんが好きです。俺様だけれどたくさん話してくれる劉磨さんがいいです。でも…これは私の我が儘だから……だから…今の劉磨さんが劉磨さんの本心なら何も言わないです。」

「……花月は…馬鹿な奴でもいいのか…?馬鹿で何もできない俺じゃカッコ悪いだろ。俺はお前にそんなところ見せたくない。」

「カッコ悪くなんて無いよ。だって…劉磨さんがカッコよくて優しいところたくさん知っているから。」

「……よし、じゃあ俺もそのお茶会邪魔してやる。勉強して疲れてんだ。甘いもの食うぞ。」

「いつもの劉磨さんですね…!」



動けよ、僕の口。聖も劉磨も謝ってるんだ。僕だって花月に謝るべきなのに……なんで『ごめん』の一言が言えないんだよ……。




「…奏も帰るぞ。」
「分かってるよ。僕に命令しないでくれる?」



「…意地っ張りな奴。」
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