生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―聖side—

お茶会の間、花月はずっと無理して笑っていた。本当は奏がいなくて寂しかったんだよな……俺が喧嘩なんかしたばかりに……


瞳の奥は泣いていて、でもそれに気づかれないようにずっと笑っていた。皆それに気づいていても誰もそれに触れることはできなかった。


好きな奴にそんな顔させるなんて…男として最低だ。


「奏、いるか?」
「なに、聖。僕に謝りに来たの?」



正直、奏のしたことは許せない。花月を利用した。でも…俺が謝って元に戻れれば…花月はきっと笑ってくれる。俺は…花月のためなら……



「昨日は悪かった……。あんなに怒鳴ってすまなかった。」

「そんな簡単に謝るってことは非があったって認めるの…?本当にバカだよね、聖は。」


奏はもともとこういう奴だけど別に俺は嫌いになったことなんてない。ただ本心をさらけ出すのが苦手なだけだって思ってる。自分を守るために強がってる。


「花月のため……?自分が謝れば元に戻れるって思ってるわけ…?本当にバカだよね。」


俺のコトはいくら言われたって構わない。俺らはそういう付き合いの中でもやってこれて信頼し合ってる。そんなことで崩れるような関係じゃない。


「本当……聖が羨ましいよ。」
「え……?」

「何でそこまでできるわけ…?何で…自分を悪者にしてまで…人のために頭を下げられる
の…?聖が謝ったって僕が聖を許すかどうかも分からないのに。」

「俺は……お前がそんな奴じゃないって信じてる。悪口言ったって…人よりも上に立とうとしているのだって、強がって見せてるだけなんだろ。お前は器用にこなしてるように見せるけど、誰にも本心は見せない。それを俺は知ってる。」

「な、なに、僕のこと分かるみたいなこと言ってるわけ?お前に僕の何が…」

「わかるさ……。俺らはずっと一緒に暮らしてきた。喧嘩した分一緒に楽しんで泣いて笑って同じ時を過ごしてきた。強がるお前も努力するお前も知ってる。それがお前の良いところだってのも知ってる。だから……もっと自分を曝け出せ。自分を見せることを恐れるな。お前が本心を出せばきっと花月も…他の奴らもお前を今以上に認める。理解してくれる。作り物の自分で生きるのはやめろ。俺は…本当のお前と戦いたい。」

「聖のくせに偉そうなんだよ。まあ、僕は心が広いから許してあげるよ。それに今回のことは…僕も悪かったし……。花月を利用して…強がって……本当、僕って格好悪いよね。」


「お前、素直になったな……。」

「な、なんだよ。聖が本当の僕でいろって言ったんだろ。」
「そうだよ。お前はお前でいいんだ。」


「そ、そんなこと言ったって花月は渡さないからね。花月は僕のものにするんだから。」

「それでこそ……ライバルだ。」

「いちいち言うことが恥ずかしいんだよ…聖は。」
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