生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「ねえ、貴女、白梨花月さんよね。」


開会式とやらが終わり、観覧席に向かう途中、華やかな傘を差した女性が私の名前を呼んだ。



「はい…えっと…私に何か…?」

「突然声をおかけしてごめんなさい。貴女の噂は前々から聞いていて1度お会いしてみたかったの。」

「私の…噂…ですか…?」


「ええ。この学園にいる限られた人間の女性。私と同じ人間の女性だと。」



私と同じ…ってことはこの人も人間っていうこと…?


「自己紹介が遅れてしまってごめんなさいね。私は朱鷺院楓(ときいん かえで)と申します。花月さんとお呼びしてもよいかしら…?」


「白梨花月です。よろしくお願いします。」
「そんなに畏まらないで。とてもまじめで礼儀正しいのね。そういう方は好きよ。」


「花月ちゃん、どうしたの……って、楓様…!?」

「そんな仰々しい呼び方しなくていいわよ。」

「お久しぶりです、楓様。体の調子はよろしいんですか……?」

「まあまあ…ってところかしら。」



「あの……お知り合いの方ですか…?」

「知り合いも何も、この方は理事長の娘さんだよ。大人びて見えるけど、14歳だよ。」

「じゅ、14歳…!?」





私と同い年…いや、私よりも大人びて見える。堂々とした立ち居振る舞い、話し方。



「そうだわ、せっかくだから今日は一緒に観覧してもいいかしら、花月さん。」

「あ、でも、劉磨さんたちに聞かないと……。」


「花月ちゃん、楓様に声をかけてもらえるなんて滅多にないことだよ!赤羽くんたちも喜ぶよ。」

「そう…かな…?」


「ダメ…かしら…?」
「い、いえ、とんでもないです。」
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