生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「いちについて、よーい……」



パン



「今年も100m走は最初から大盛況だね。」

「劉磨は4走者目、聖は8走者目か……。」



待機している人たちは体格がいい人ばかりで、逞しそう。


「あ、赤羽くんがこっち見てる。花月にアピールする気満々だな。」

「自信…あるのかな、走るのに。」


「花月、鈍すぎだよ。あ、緑川くんもこっち見てる。手、振ってあげたら?」
「うん。」




2人に向かって手を振ると、劉磨さんにも聖さんにも顔をそらされてしまった。


嫌だったのかな……?


「赤羽くんは、『何恥ずかしいことしてんだよ。』って感じで、緑川くんは照れてそっぽ向いたって感じだね。」


「まあ、劉磨はともかく、聖は慣れてないからね。それより――」





「あずさ、奏くん、大変だよ!」




振り返ると息を切らしながら走ってくる結愛ちゃんの姿。



何があったんだろう……。


「何かあったの…?」

「実は、楓様が倒れて……今は日陰で休んでるんだけど、保健室に運べなくて……奏くん、手を貸してくれる?」
「でも……。」

「花月なら、私が一緒にいるから大丈夫。結愛と一緒に楓様のところに行ってあげて。」


「ありがとう、水瀬さん。」




結愛ちゃんと共に走っていく奏。楓さん…何ともないといいんだけれど……


「私たちも行った方がいいのかも……。きっと、楓さん、辛いのかも……」

「まだ大丈夫だよ。それより私たちはここにいないと。赤羽くんたちの出番が終わったら私たちも行こう。」

「はい。」
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