生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―奏side—

水瀬さんのあとをついて行くと、言っていた通り、楓姫がうずくまっていた。さっきまでさしていたはずの傘もたたまれている。


「姫、立てる?」
「聖は……?」


「今競技中で僕しか来られなかったんだ。水瀬さんが呼びに来てくれた。」


「結愛……ありがとう。」
「いえ……私は……」



姫の肩に手を回し体を持ち上げる。



「水瀬さん、姫の傘をお願い。」


「んなさ………。」


水瀬さんの言葉に振り返ろうとしたとき、頭に鋭い痛みを感じた。その痛みはどんどん強くなっていき、姫を抱えていた僕の腕の力は緩んでいく。


「水瀬さ……どうして……」


薄れていく意識の中見えたのは、姫の傘を握りしめ振りかざす水瀬さんの姿。傘の先に纏いついているのは僕の血の匂い。


「こうするしか……なかったの……。ごめんなさい……奏くん……。」
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