生贄の花嫁 〜Lost girl〜
「やっぱり、赤羽くんは早いね。」
「うん……運動得意みたいですから。」
「楓様のことが気になる…?それとも桃瀬くんのこと……?」
「どちらもです。楓さん、日傘をさしていたけれど、とても顔色が悪そうでした。奏が行ったなら大丈夫だと思うけれど、心配で……。」
「いい人なんだね……花月は。私たちも様子を見に行こうか。緑川くんも後で事情を話せば分かってくれるよ。」
「はい…!」
あずさちゃんの後をついて行きグラウンドを後にする。
「こっちだよ。」
ついて行った先にあったのは保健室ではなく、使われた形跡のない空き教室だった。
「本当にここ…なんですか…?」
「……連れてきました……楓様。」
あずさちゃんの言葉に背筋が凍る。楓さんは倒れて…それで私たちはここに向かってきたはず。それなのになんで……楓さんがここに……?
「ふふふ……本当にあなた達はいい子ね。私のために好きな人まで傷つけて……。」
「結愛…ちゃん…何でここに……。」
楓さんの側に立っているのは結愛ちゃんで……服が赤く染まっていた。
「何で……?さっき言ったじゃない、お友達に紹介したいって……改めて紹介するわ。私のペットの水瀬結愛と水瀬あずさよ。」
「ペット……?」
「そうよ…私のためにどんな命令にも従って、どんな願いも叶えてくれるの。」
「か、奏は…?結愛ちゃんと一緒にいたはずじゃ…。」
「さあ……どこにいるのかしらね…。お姫様の側には王子さまはいなくてはいけないのに…どこに行ってしまったのかしら…?」
この人に感じていたものがやっとわかった。この人からはぬくもりを感じない。生気を感じない。冷たい氷のように鋭く恐ろしいものを感じる。
「結愛ちゃんと……あずさちゃんがペットって……なんですか…?」
「言葉のとおりよ。私のために全てを尽くして、どんなこともしてくれるの。私が望めばなーんでもしてくれるのよ。なーんでも。」
「今まで…友達だって言ってくださったことも…全部命令だったんですか…?一緒にいてくださったことも、笑顔で接していてくださったことも…全部嘘だったんですか…?」
「それは……。」
「当たり前でしょう。でなければ、貴女なんかと関わる意味なんてない。貴女、貴族の娘なんでしょう…?頭もよくて、性格もよくて、吐き気がするくらい気持ちの悪いできすぎた人間。そうやって綺麗な人間を演じて、聖たちのことも誑かしているんでしょう…?貴女のせいで私との婚約を彼が断わった。彼は私のものなのに……私から奪うなんて許さない。」
なんだろう。この人は怖い。怖いけれど、それ以上に心の中で何かが膨れ上がってくる。痛みでも哀しみでもない。憤りが…この人への怒りが生まれてくる。
「私は…綺麗な人間を演じているつもりもないし、誑かしてなんかいません。それに、聖さんはモノじゃない。」
「正論なんかいらないのよ。結愛、あずさ、この女を片付けておいて。そうだわ、始末してちょうだい。全身の血を抜いてつるし上げたらさらに素敵ね♡」
「そんな残酷なこと……」
「できないの…?私の命令に背くの…?中流階級の分際で…?それとも、貴女たちも殺されたいの?」
「……殺せば…いいんですね…?」
「あずさ……。」
「あら、あずさはいつもお利口ね。何でも言うことを聞いてくれる。それに比べて結愛、貴女は何なの?さっきも最後まで命令を遂行できなかった。もう次はないわよ。」
「……。」
「それじゃあ、いい報告を待っているわ。」
「うん……運動得意みたいですから。」
「楓様のことが気になる…?それとも桃瀬くんのこと……?」
「どちらもです。楓さん、日傘をさしていたけれど、とても顔色が悪そうでした。奏が行ったなら大丈夫だと思うけれど、心配で……。」
「いい人なんだね……花月は。私たちも様子を見に行こうか。緑川くんも後で事情を話せば分かってくれるよ。」
「はい…!」
あずさちゃんの後をついて行きグラウンドを後にする。
「こっちだよ。」
ついて行った先にあったのは保健室ではなく、使われた形跡のない空き教室だった。
「本当にここ…なんですか…?」
「……連れてきました……楓様。」
あずさちゃんの言葉に背筋が凍る。楓さんは倒れて…それで私たちはここに向かってきたはず。それなのになんで……楓さんがここに……?
「ふふふ……本当にあなた達はいい子ね。私のために好きな人まで傷つけて……。」
「結愛…ちゃん…何でここに……。」
楓さんの側に立っているのは結愛ちゃんで……服が赤く染まっていた。
「何で……?さっき言ったじゃない、お友達に紹介したいって……改めて紹介するわ。私のペットの水瀬結愛と水瀬あずさよ。」
「ペット……?」
「そうよ…私のためにどんな命令にも従って、どんな願いも叶えてくれるの。」
「か、奏は…?結愛ちゃんと一緒にいたはずじゃ…。」
「さあ……どこにいるのかしらね…。お姫様の側には王子さまはいなくてはいけないのに…どこに行ってしまったのかしら…?」
この人に感じていたものがやっとわかった。この人からはぬくもりを感じない。生気を感じない。冷たい氷のように鋭く恐ろしいものを感じる。
「結愛ちゃんと……あずさちゃんがペットって……なんですか…?」
「言葉のとおりよ。私のために全てを尽くして、どんなこともしてくれるの。私が望めばなーんでもしてくれるのよ。なーんでも。」
「今まで…友達だって言ってくださったことも…全部命令だったんですか…?一緒にいてくださったことも、笑顔で接していてくださったことも…全部嘘だったんですか…?」
「それは……。」
「当たり前でしょう。でなければ、貴女なんかと関わる意味なんてない。貴女、貴族の娘なんでしょう…?頭もよくて、性格もよくて、吐き気がするくらい気持ちの悪いできすぎた人間。そうやって綺麗な人間を演じて、聖たちのことも誑かしているんでしょう…?貴女のせいで私との婚約を彼が断わった。彼は私のものなのに……私から奪うなんて許さない。」
なんだろう。この人は怖い。怖いけれど、それ以上に心の中で何かが膨れ上がってくる。痛みでも哀しみでもない。憤りが…この人への怒りが生まれてくる。
「私は…綺麗な人間を演じているつもりもないし、誑かしてなんかいません。それに、聖さんはモノじゃない。」
「正論なんかいらないのよ。結愛、あずさ、この女を片付けておいて。そうだわ、始末してちょうだい。全身の血を抜いてつるし上げたらさらに素敵ね♡」
「そんな残酷なこと……」
「できないの…?私の命令に背くの…?中流階級の分際で…?それとも、貴女たちも殺されたいの?」
「……殺せば…いいんですね…?」
「あずさ……。」
「あら、あずさはいつもお利口ね。何でも言うことを聞いてくれる。それに比べて結愛、貴女は何なの?さっきも最後まで命令を遂行できなかった。もう次はないわよ。」
「……。」
「それじゃあ、いい報告を待っているわ。」