生贄の花嫁      〜Lost girl〜
楓さんがいなくなってから結愛さんたちも私も一言も発さず微動だにしない。


「最初からすべて……嘘だったんですか…?」
「…当然でしょ。楓様の言葉のとおりよ。」


「…違う……。」
「…何が違うの…?楓様に命令されたから近づいた。友達のフリをした。それだけのこと。」


「私は…そんなの違うって信じています。」
「…夢見たこと言ったって無駄よ。すべて…作り物だったんだから。」

「私はまだ…結愛ちゃんとあずさちゃんの本心を聞いてません。命令されていて私と接していたことも…全て作り物だったということが本当だとしても……それでも私は2人の本心を聞くまでは絶対に信じません。だって……大切な友達だから。一緒に過ごした時間が全て嘘だっただなんて…そんなの信じない。」

「そうやって、いい人でいると傷つけなくていいものまで傷つける。大切だと思うものを守れる世界で生きてな。早いうちに手を引いたほうがいい。それに私は…あんたを友達なんて思ったことは1度も無い。全部命令だから、リップサービスとして付き合っていただけ。これが私の本心。分かったら消えな。」



「そっか……本当に…そう…思われていたんだ……。今まで迷惑かけてごめんなさい。ありがとうございました。」




私のせいでまた誰かを傷つけてしまう。私は…この世界にも居場所がなくなってしまうの…?この世界を…皆との生活を失ったら…私はどこにいけばいいの……?
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「あずさ…本当にあんなこと思ってたの…?」

「…半分は本当。残りの半分は…嘘かどうかも分からない。でも、ああ言わなきゃ花月は私たちから離れない。それよりも、結愛、あんたは平気なの?桃瀬くんを手にかけて…」

「手にかけてって言っても…殺してはいないよ。そんなこと…怖くてできなかった。怖くて…楓様の傘で後ろから殴っただけ。頭を思い切り殴ったから、しばらくは動けないと思うけど、すぐに回復すると思う。」

「…そうしたら…いなくなるのは私たちかもね。いくら命令とはいえ、貴族の…国王継承者候補に怪我をさせたんだから。」

「それにしても驚いたなー。花月ちゃんは友達だって思っててくれたんだね。嘘まみれの私たちを信じて……ペットとしての私たちじゃなくて……私たち自身の心を聞くまで信じないって……。もっと違った出会い方ができたら普通に過ごせたのかな…?もっと普通の友達になれたのかな…?偽りのない私たちでいられたのかな……?」



「…そうかもね……。」
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