生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「まあ、完全に諦めたわけじゃないわよ。ただ…最初から、あの2人はお似合いだと思ったし、結果が見えてはいたわ。聖クンが花月チャンを襲うとは思わなかったけど。」

「聖が花月を襲った!?」
「声が大きいわよ、楓チャン。」


「楓ちゃん、どうかしたの?襲ったって…?」

「う、ううん、ほら、聖が海賊で花月が天使の衣装だから襲われないか心配だなっておもっただけ!」


「…あんなこと…もうしない…絶対に…約束する。」
「うん…えっと…ありがとう……?」



「なんで私がひやひやしなきゃいけないのよ。」

「今はもう大丈夫みたいだけど、あの時は大変だったのよ。花月チャン、アタシたち全員がダメになって、琉生クンに手を借りて…。」

「琉生くん…?」


「以前面識のあった下層吸血鬼上がりの少年です。」

「下層吸血鬼って、純血種の吸血鬼に血だけ吸われた不幸な種族のことですか…?」

「語り継がれているのはそうね。実際は、自我がきちんとあって人間としての感情も持ち合わせている素晴らしい子たちよ。」



「私も……下層吸血鬼にでもなれたら…よかったのに…。」

「そういえば、楓チャンのご両親も吸血鬼…なのよね…?」
「はい。2人とも立派な吸血鬼です。でも…生まれてきた私は吸血鬼としては不完全な人間なんです。おかしいですよね……吸血鬼のDNAがないだなんて……。」


「そんなことないと思うわよ。アタシたちが知っている子でね、後天的にDNAが作用した子がいるの。その子は人間の父親と下層吸血鬼の母親の間に生まれた子なの。下層吸血鬼が産む子供に親が持っていた吸血鬼のDNAが全て移ることは有名よね。でも、その母親が持っていたDNAを受け継いだはずなのに、吸血鬼にはならなかったの……あることを境にするまでは。」


「あること……?」


「その子はね、他の吸血鬼のDNAが体内に入ったときに突然変異として吸血鬼としての本能が目覚めたの。」


「その人は…今はどこにいるんですか…?」

「完全な吸血鬼になるために旅に出ているわ。」



「まあ、つまり私たちの見解としては、貴女のDNAがいつか何かのきっかけで作用するのではないかということです。今は不完全でもいつか完全な吸血鬼になれます。貴女は吸血鬼の両親の間に生まれてきたのですから。」


「そう…なれたらいいな。そうしたら…きっと認めてもらえる……。」

「さ、難しいお話はお終いにしてランタン探しを楽しみましょう。いつまでも聖クンたち2人の世界に浸らせてると危ないわ。」
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