生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「泰揮がミスターコンに出るー!?」
「そうよ。」


久しぶりの皆との夕食で出た最初の話題は、泰揮クンがミスターコンテストに参加するという告白だった。


「泰揮クンが出るなら応援しないとですね。」

「あらあ、応援だなんてありがとう。やるからには優勝を目指さなくちゃね。劉磨クンも参加する?」
「俺は出ねえって何年も言ってんだろ。他の奴と比較されて好き勝手言われるのも嫌いだしな。」




「……そんなに浮かれて馬鹿みたい。」

「楓ちゃん…何かあったの……?」
「別に……何もない。何も……ないだけ。」

「楓…俺らのクラスは喫茶店やるから見に来るか?」
「……行かない。」


「文化祭……嫌い……?」
「……嫌いって言うか…居場所…ないから。」

「お前友達もいないのかよ。」
「ちょっと、劉磨……。」

「……花月が庇ってくれて、先輩たちが記憶を操作してくれて何もなかったことになったけど…でも……嫌われていることに変わりはない。媚びてくるのも変わりはない。そんな人たちと友情ごっこなんかしたって虚しいだけ。」



「それなら一緒に文化祭周らない?」
「……いいの……?私と周ったら…花月も嫌な目で見られちゃうよ…。それに……聖たちと周るでしょ。」

「うん。だから皆で周ろう。」

「…楓、俺らは家族だろ。」




「それなら……一緒に周ってあげてもいいわよ。」
「本当に素直じゃねえよな。」



「私と泰揮のクラスはプラネタリウムの展示です。よければどうぞ。」

「そうなのよー。テーマはずばり愛。悠夜ったらはりきっちゃって実行委員なんてしてるものね。」
「はりきってなどいません。他の人に任せるのが恐ろしいので立候補しただけです。それにテーマを決めたのは私ではありません。」

「文化祭まで毎日準備だから明日からはなかなか一緒には帰れないかもねー。姫はどうする?僕たちのところにでもくる?」

「……いい。家にいる。」

「来たくなったらいつでもおいでね、楓ちゃん。」
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