生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―翌日―

「やっぱり楓様は今年も来ないか。」
「今年もってことは今までも……?」

「うん…。体が弱いっていうのもあるけど、学校行事はことごとく休むんだよね、昔から。」


「楓様ってさ、クラスに馴染めてないんだよ。あれくらいの年頃ってさ、友達と遊んだりご飯食べたりするけどさ、そういうのが無いんだよ。ずる賢い人たちは楓様を利用したくて近づいてくるし、グループ化してる女の子は煙たがるし。楓様ってさ、寂しがり屋なのに意地っ張りだから自分から打ち解けることもないし。見えない壁があるんだよ。」

「そっか……。」


私は…家族以外の人と何かを共有することって無かったけれど寂しいと思ったことはなかった。でもそれはきっと、外の世界を知らなかったから。でも…楓ちゃんは、そういう世界を知っていて…知っているのに離れたところから見るだけの生活で……それは知らなかったということよりも寂しく心細い気がする。


「あいつのための文化祭にしようとか考えんなよ。」

「え、やっぱりだめ…かな…?」

「あーもう、家でも学校でもどこでも何であいつのことばっかなんだよ。文化祭だって本当は……。俺だって…俺だって花月と……」

「はーい、赤羽くんそれ以上はストップね。ミスターコンの打ち合わせに行くよ。私たちがエントリーしといてあげたんだから。」
「私たちの可愛い花月を困らせないでよ。」


「おい、お前ら引っ張んなよ、おい……」




「やっとうるさいのが止んだ。まあでも劉磨の気持ちも分からなくはないけどさ……やり方を考えてほしいよ。」
「……?」





「おーい、誰か衣装のモデルに来てくれないかー?」

「衣装のモデル……?」
「衣装製作の子たちが作ったいろんな服を着てあげるんだよ、多分。去年僕もやったし。」

「…たしか奏のは女子の代役だった……。」
「そ、そこは言うなよ、隠して言ったんだから。」


「私…やってみようかな。」
「…じゃあ俺もやる。」




「ほんと2人で何やってんだか……おーい、聖と花月がモデルやるってさ。」

「おー、助かる。よろしくね、2人とも。」

「はい。よろしくお願いします。」
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