生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―奏side—

「聖、モテモテじゃん。」

「…親しい奴じゃないから疲れた……。」

「花月、悲しそうな顔してたよー。ヤキモチ妬いてもらえるだなんて羨ましいね。」
「…俺謝って……」


「聖、落ち着いて。今は仕事中。花月だって接客にやっと慣れてきて客の流れも落ちついてきてるからトラブル起こさないで。」


「まあ、赤羽くんと結愛が表にいるから花月の身は大丈夫だと思うよ。それにしても、本当に君たち変わったよね。特に緑川くん。前は何にも興味なさそうな顔してたのに……。」

「…あいつだけは…違うんだ。」



「水瀬さん、そんなに聖を煽らないで…」
「だって君、煽らないと本気にならないでしょ?」


「…俺…接客してくる。」








「水瀬さん…君は聖たちをどうしたいの…?期待しているような言い方をしたり煽るような言い方したり……。」

「別に……まあ、時効だから君には言ってもいいかな。私…緑川くんのことが好きだったのよ。」
「え……?」

「いつも何にも興味ない顔して淡々としている彼が感情的になる姿が見てみたかったの。どんなふうに笑って、どんなふうに怒るのか……見てみたかった。それだけ。」




そうか…水瀬さんも聖のことが……



「聖はいろんな人に愛されてるんだな……それに比べて僕は……。」
「いるよ。近くに。君のことを愛しく思う子が。」

「でもそれは…優等生、国王継承者だから…だろ?」



「そう思いたいならそう思ってれば。あんた意外と根暗でしょ。私だったら絶対無理。でも……その子はきっと……桃瀬くんが何も持っていなくても……何もなくてもずっと側にいることを望んでくれると思うよ。あの子はそういう子だから。」

「あの子……?」







ガシャン

いきなり聞こえてきた何かが割れ壊れる音。


この音は……お店側……?
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