生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―聖side—

俺が接客に戻ったとき、花月が他の生徒たちともめていた。会話のやりとりから楓のことでもめていることは分かったけど……あんなに感情的な花月は琉生の時以来だった。


俺も……この前までは楓のことを悪く思っていたのに……花月のおかげかな……。


「ん……楓ちゃん……。」

「楓を守ってくれてありがとな。後は俺らに任せろ。」


花月の額にキスを落とす。気づかれないように、そっと……静かに。


「んぅ……聖さ……?」
「…お、起きたのか…!?」

「うん……なんか温かくて気持ちがよくて……楓ちゃんは!?」

「今劉磨が探しに行ってる。悪かったな、首。」
「え……?」


「…あの時、咄嗟にできることが思い浮かばなくて花月の意識失わせちまって……。」

「ううん……私こそごめんなさい……あんな迷惑なことして……。」


「…楓のためにあんなに怒ってくれたんだろ?あんなに強く意見を言うお前は久しぶりに見た気がする。」

「どうしても……許せなかったの。楓ちゃんのこと何も知らないのに、好き勝手言われて……。」

「とりあえず今は水飲んで落ち着け。俺はここにいるから。」

「うん。あ、文化祭周る約束……。」



「…お前が落ち着いてからでいい。それに……周れなくなったとしても…こうやって一緒にいられるだけで……。」


寝起きの花月は目が虚ろでどこか色っぽい。それに……繋いでいる手から伝わってくる熱が心地いい。


「喫茶店…大丈夫…かな……?」

「…まあ、掃除は大変かもしれねえけど、大丈夫だよ。トラブルあっての文化祭だからな。」
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