生贄の花嫁      〜Lost girl〜

第33話 覚醒の夜

「本っ当にごめんなさい!」


いきなり部屋に入ってきて地面に顔を伏せる泰揮クン。

わざわざ謝りに…来てくれたの…?

「自分勝手なことして…2人を傷つけて…皆を巻き込んでごめんなさい。絶対に許されないことをしたと思ってる。」


悪いのは…泰揮クンだけじゃない。拒めきれなかった私にも非がある。


「違うのよ。花月チャンは、自分の意志で決めたと思ってるかもしれないけど…本当は催淫効果のある媚薬を使ったの。花月チャンがまともに考えることができないようにって……だから……全部…アタシが悪いの。」


催淫…効果…?それじゃあ、あのときの胸の高鳴りや熱は全部……幻覚……?


「そうよ……。全部アタシが仕組んだの。聖クンのことを少しでも忘れさせることができたらって……。」


泰揮クンがしたことはきっと、とても恐ろしいことだったのかもしれない。でも……泰揮クンを憎むことも怨むこともできない。


だって、大切な家族だから。

「花月チャン……。」

「泰揮クン……ごめんなさい。今まで私が……皆の気持ちから…逃げていたから…今回みたいなことが…起きてしまった。泰揮クンの気持ちも……皆の気持ちも……とても嬉しいです…。でも……私の心には……聖さんしか…いないから……。だから……ごめんなさい。」


「いいのよ。貴女たちが幸せなら、アタシも幸せよ。」



涙を浮かべながら笑う泰揮クンの顔は少し寂しげだったけれど、どこか吹っ切れたようにすっきりしていて、私も安心することができた。




「それじゃあ、2人の邪魔をしちゃ悪いからアタシはお暇するわ。」
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