生贄の花嫁 〜Lost girl〜
―大広間―
「……花月が……覚醒する……?」
「ええ、このままだと今夜には飢えが始まるでしょう。」
「花月も……吸血鬼になるってこと……?」
「それを望んでいたはずなのに……何でだろう……花月には人間のままでいてほしかったって思ってる。」
「薬……作るわ。」
「え……?」
「花月チャンを人間に戻す薬。アタシのせいでこんなことになったんだもの。アタシが…責任を取らなくちゃ。」
「いえ……もし、今回のことが無くてもいずれ花月さんが聖と交われば吸血鬼になっていた。ただ時間が早まっただけのことです。」
「お前ら、何でそんなに後ろ向きなんだよ。花月が吸血鬼になるってことは俺らと永遠にいられるってことだろ?」
「でも……人間じゃなくなって、いずれは王妃になって、国のためだ、子孫繁栄のためだって子供を産まされ続けるんだよ。今までみたいな家族ごっこができなくなるんだよ。」
「それが何だ。お前は…お前らは、花月が何も言ってないのにそうやって勝手に思い込むのか?花月が……聖のことを好きなら、例え国のためでもなんでも子供を産んで家族が増えて喜ぶとは思わないのかよ。」
「そんな簡単なことじゃないんだよ。劉磨だって今まで何回も見てきただろ?生贄の花嫁になった歴代の王妃たちを。そりゃ最初は皆幸せそうだったよ。でも、何人も何十人も産まされ続け、心も体も壊れた人もいた。強力な子孫を残せるからって、金で売られて見世物にされた人もいた。花月がそうならないって言いきれるの!?」
「ほんっとうにお前は口先だけなんだな。何があっても、家族でいるって約束しただろ!歴代の王妃たちのことも分かってっけど、そうならないよう俺らが守るんだよ。お前は、聖と花月が婚約して家庭を持ったら離れる気だったのかよ…?」
「………。」
「継承者候補が継承者に近づいたらいけないなんて法律もねえ。継承者と王妃の立場を崩せねえなら俺らが立場を変えるしかねえだろ。それともお前は怖気づいて逃げるか?」
「それは……」
「悠夜!」
「どうしたんですか、聖。貴方には花月さんの看病をするようにと……」
「…悠夜の予想が当たっちまった。花月は特殊能力持ちの吸血鬼になる。」
「やはりまた新しい能力が……?」
「…確証はねえけど、さっき、俺と手を繋いだ時、悠夜に話しかける楓が見えたって……。これって千里眼なんじゃ……。」
「……特殊能力ってどういうことなの…?聖。」
「…俺ら吸血鬼は基本的には1つの能力しか生まれ持ってこない。俺の炎や悠夜の記憶操作なんかがそうだ。でも……極稀に複数の能力を持つ吸血鬼が存在する。そして、それは……吸血鬼化した元人間であることが多い。」
「あまりにも吸血鬼のDNAが強力すぎて元人間の体では抑えきることができない。ゆえに、複数の能力として発散させることで体の蝕みを防ぐ。」
「それなら花月の能力が増えたことにも問題はないんじゃ…」
「…能力の系統に問題があるんだ。複数の能力を持つ場合、通常は1つは潜在能力若しくは体質に関わる能力、そしてもう1つは火力や風力といった自分で制御ができる能力なんだ。でも、花月の能力はテレパシーと千里眼。どっちも前者になる。潜在能力や体質能力は自分の力では制御できない。常に能力が働いてしまって体への負担が大きいんだ。」
「飢えが始まれば能力と消費量も上がります。つまり、今夜の飢えが乗り越えられなければ、花月さんは亡くなる可能性があるということです。」
「……そんな……。」
ガシャン
「なんの音…?」
「…2階からだ……花月か…。」
「花月さんは私と聖でどうにかします。劉磨と奏は楓さんをお願いします。今、吸血鬼になる彼女にとって、楓さんは格好の餌食となります。」
「わかった。泰揮は…?」
「アタシは何か能力を抑えられるものを作るわ。」
「……花月が……覚醒する……?」
「ええ、このままだと今夜には飢えが始まるでしょう。」
「花月も……吸血鬼になるってこと……?」
「それを望んでいたはずなのに……何でだろう……花月には人間のままでいてほしかったって思ってる。」
「薬……作るわ。」
「え……?」
「花月チャンを人間に戻す薬。アタシのせいでこんなことになったんだもの。アタシが…責任を取らなくちゃ。」
「いえ……もし、今回のことが無くてもいずれ花月さんが聖と交われば吸血鬼になっていた。ただ時間が早まっただけのことです。」
「お前ら、何でそんなに後ろ向きなんだよ。花月が吸血鬼になるってことは俺らと永遠にいられるってことだろ?」
「でも……人間じゃなくなって、いずれは王妃になって、国のためだ、子孫繁栄のためだって子供を産まされ続けるんだよ。今までみたいな家族ごっこができなくなるんだよ。」
「それが何だ。お前は…お前らは、花月が何も言ってないのにそうやって勝手に思い込むのか?花月が……聖のことを好きなら、例え国のためでもなんでも子供を産んで家族が増えて喜ぶとは思わないのかよ。」
「そんな簡単なことじゃないんだよ。劉磨だって今まで何回も見てきただろ?生贄の花嫁になった歴代の王妃たちを。そりゃ最初は皆幸せそうだったよ。でも、何人も何十人も産まされ続け、心も体も壊れた人もいた。強力な子孫を残せるからって、金で売られて見世物にされた人もいた。花月がそうならないって言いきれるの!?」
「ほんっとうにお前は口先だけなんだな。何があっても、家族でいるって約束しただろ!歴代の王妃たちのことも分かってっけど、そうならないよう俺らが守るんだよ。お前は、聖と花月が婚約して家庭を持ったら離れる気だったのかよ…?」
「………。」
「継承者候補が継承者に近づいたらいけないなんて法律もねえ。継承者と王妃の立場を崩せねえなら俺らが立場を変えるしかねえだろ。それともお前は怖気づいて逃げるか?」
「それは……」
「悠夜!」
「どうしたんですか、聖。貴方には花月さんの看病をするようにと……」
「…悠夜の予想が当たっちまった。花月は特殊能力持ちの吸血鬼になる。」
「やはりまた新しい能力が……?」
「…確証はねえけど、さっき、俺と手を繋いだ時、悠夜に話しかける楓が見えたって……。これって千里眼なんじゃ……。」
「……特殊能力ってどういうことなの…?聖。」
「…俺ら吸血鬼は基本的には1つの能力しか生まれ持ってこない。俺の炎や悠夜の記憶操作なんかがそうだ。でも……極稀に複数の能力を持つ吸血鬼が存在する。そして、それは……吸血鬼化した元人間であることが多い。」
「あまりにも吸血鬼のDNAが強力すぎて元人間の体では抑えきることができない。ゆえに、複数の能力として発散させることで体の蝕みを防ぐ。」
「それなら花月の能力が増えたことにも問題はないんじゃ…」
「…能力の系統に問題があるんだ。複数の能力を持つ場合、通常は1つは潜在能力若しくは体質に関わる能力、そしてもう1つは火力や風力といった自分で制御ができる能力なんだ。でも、花月の能力はテレパシーと千里眼。どっちも前者になる。潜在能力や体質能力は自分の力では制御できない。常に能力が働いてしまって体への負担が大きいんだ。」
「飢えが始まれば能力と消費量も上がります。つまり、今夜の飢えが乗り越えられなければ、花月さんは亡くなる可能性があるということです。」
「……そんな……。」
ガシャン
「なんの音…?」
「…2階からだ……花月か…。」
「花月さんは私と聖でどうにかします。劉磨と奏は楓さんをお願いします。今、吸血鬼になる彼女にとって、楓さんは格好の餌食となります。」
「わかった。泰揮は…?」
「アタシは何か能力を抑えられるものを作るわ。」