生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「あ、おはよう、花月……ちゃん…?」


学校につくと教室までの道のりで沢山の人に声を掛けられ、事情を説明し聖さんも私も疲れきっていた。あんなにたくさんの人に話しかけられたの初めてだよ……。

「その様子だと、無事に吸血鬼になれたみたいだね。瞳の色も綺麗だし、なんか色気が出て大人っぽくなったね。」

「あずさもそう思う?やっぱり相手が緑川くんだからかな……?」
「あはは……。」


絶対に真実は言えないな、この感じだと。泰揮クンのためにも、皆のためにも…私のためにも。


「それよりね、会ってほしい人がいるの。」
「会ってほしい人…?」



ドアの方を見ると案の定、楓ちゃんが気まずそうに立っていた。


「楓様…。」

「……もう……そんな呼び方してもらうような立場じゃないよ。」





「え、あれが朱鷺院楓…?なんかめっちゃ大人しくなってね?」
「なんか文化祭中に問題起こしたんでしょ?揉め事起こしたらしいよ。」


また……周りの人たちが楓ちゃんの不安を煽ろうとしている。勇気を出して思いを伝えようとしているだけなのに……。

「……今まで……ペット契約なんてして……ごめんなさい。貴女たちを利用して……酷いことさせて……ごめんなさい。」


「今更謝ったって遅いんだよ。理事長の娘だからってよ。」
「そうだそうだ。謝るんなら慰謝料払え!」
「土下座しろー。」


学校につくまでのリムジンの中で劉磨さんたちに言われた。楓ちゃんが何を言われても絶対に何もしてはいけない、と。これは楓ちゃんが乗り越えなければいけないものだから助けてはいけない、と。

目の前で起きている現実に怒り狂いそうになる自分を一生懸命抑える。泣きそうな楓ちゃんを前に何もできないことはとても辛い……。


「あいつ泣いてるよ。一応血は通ってたんだな。」
「もう来なけりゃいいのに。」
「調子乗ってたからだよな。ガキが偉そうでムカつくよなー。今更謝って許してもらおうなんてさー。」














「あーもう、うるさいな!」


野次を飛ばしていた人たちの声をかき消したのは、結愛ちゃんの声だった。

「そんなんだから、私たちみたいな中流階級以下の人は品が無いって言われるのよ。」

「は?お前何言ってんだよ。そのガキが悪いんだから現実教えてやってんだよ。」

「楓様のどこが悪いっていうの!?楓様は今まで自分が犯した過ちを認めて謝ってるの。それのどこが間違ってるっていうのよ。」


「じゃあそのガキがやってきたこと全部お前は許せるのか?汚いことして人を傷つけたやつを許せるのかよ!?」

「簡単に許せるとは思わない……でも…命令とはいえ、汚いことをしたのは私たちにも責任はある。楓様が貴方たちに罵られ蔑まれるのならそれは私たちも同じこと。」


「そうね。だって、私たちも拒否すればよかったんだから。なのに、全て楓様の責任にするのはお門違いよね。」



「……結愛…あずさ……。」


「じゃあお前ら今日から全員ハブだ!奴隷扱いしてやるよ。」

「そんなことで私たちを傷つけられると思うならやれば?私たちは絶対に屈しないから。」
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