生贄の花嫁      〜Lost girl〜
あのあと、劉磨さんはまた眠ってしまった。ゆっくり休んで、少しでも心の傷を癒してほしい。

今の時刻は18:00。本来なら夕食の時間だ。皆が帰ってくるまでまだ時間はある。普段、ご飯を作ってもらってるから、たまには自分で作ってみよう…。

「きゃ~!油がはねた。」

私が作ろうと思ったのはお肉と野菜のソテー。ざっくばらんに切った野菜と肉を油をしいたフライパンに入れたらすごい勢いで油がはねた。

料理ってこんなに難しいものなの…?シェフが作っていたみたいにはさすがにできないけど、これくらいなら簡単だと思ったのに…。


「皆、帰ってきたのか…?って、お前何してんの?」
「劉磨さん…見てわかりませんか?料理です。あつっ!」
「ばか、よそ見すんな、危ねえだろ。俺が変わるから花月は向こうで座ってろ。」

いそいそとエプロンをつけ、フライパンを握る彼。なぜか後姿がかっこよく見えた。


「なんで、自分で料理しようと思ったんだよ。起こしてくれれば俺がやったのに。」
「だって…すごく気持ちよさそうに寝ていたから…。起こすの申し訳ないなって思って。」
「はあ……もう絶対1人で料理するなよ。お前がやると火事になりかねない。」

「はい…ごめんなさい…。」
「ほら、もうすぐできるから…待ってろ。」


ガチャ

「わあ、いいにおい。」

「ただいまぁ。」
「み、みなさんお帰りなさい。でもまだ学校の時間じゃ…。」

「来週からテストだから、先生が早めに返してくれた。」
「テスト…?」

「忘れてた!今日、金曜日だからあと2日しかねえじゃん。」

「劉磨、ドンマイ。」


「あの…テストって?」
「う~ん…なんて言ったらいいかな……実力を試すっていえばいいのかな。成績が良ければ奨学金とか奨励金も出るし、いいことづくしだよね。」

「明日から皆で勉強しましょう。分からないところはアタシたちが教えてあげるわ。」
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