生贄の花嫁      〜Lost girl〜
あの後屋敷に戻って青峰くんと勉強会をした。地頭がいい人だから、私が教えたことをすぐに覚えてくれて、勉強会を楽しんでもらえたみたいでよかった。

「…花月、後片付け手伝う。」

「聖さん、ありがとう。」
「…………。」



聖さんがさっきからずっと何も話さない。いつもなら好きなこととか、他愛もないこと話すのに……。



「…本当にあいつと……何もないんだな…?」
「え……?」

「…青峰と……。」

「もしかして……ヤキモチ…?」
「…ち、ちが……くはないけど……。」



恥ずかしそうに目をそらす聖さんはとても可愛かった。ヤキモチって自分が妬くのはと恥ずかしいけれど、妬いてもらえるのは少し嬉しい。


「青峰くんね、絵を描くためにフランスに留学したいんだって。それで、フランス語の勉強のために呼んだんだよ。すごいよね、夢があるって。」

「…俺にも……夢がある。」

「うん。私もあるよ。聖さんと…皆とずーっと一緒に暮らすこと。」

「…俺もずっと一緒にいたい。」


「うん……。あ、そういえば、聖さんの誕生日っていつ…?」


「……?7月22日…?どうして誕生日…?」
「まだ内緒。」




「…花月は…?花月はいつだ…?」

「私は1月2日。三が日だからよく忘れられちゃうんだけどね。」
「…今年の花月の誕生日は……俺が予約したい。2人でお祝いしたい。」
「ありがとう……。楽しみにするね。」

「…ああ。」




「花月チャーン、お皿はそのまま置いといて……ね。」




聖さんとキスしそうになったとき、泰揮クンの声が後ろから聞こえた。


「あらら、お邪魔しちゃったみたいね。お皿置いといてね、何も見てないからごゆっくりどうぞ!!」




足早に去っていく泰揮クン。廊下から何かがぶつかる音がして間もなく泰揮クンが転んだ音が聞こえた。



「うふふ……。」

「…泰揮、派手にこけたな。」

「泰揮クンが焦っているところって初めて聞いたかも。」


「…花月、約束のキス…したい。」
「え…?」


「…誕生日…お祝いする約束のキス。ダメか……?」


「ううん……いいよ。」
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