生贄の花嫁      〜Lost girl〜
2人の部屋に入ると沈黙が流れた。皆で黙々と布団を敷いている。


「お母さん、すごく優しそうだったね。」

「優しい…っていうか、お人よしなだけだよ。」

「でも…なんか嬉しくて。お母様に『おかえり』って言ってもらうのすごく久しぶりだから。」


「花月のお母さんはどんな人…だったの…?」

「私のお母様は、仕事人間…っていうか、家にいないことが多くて……って言っても別に放置されてたとかではないよ。ただ……あまり家では会えなかったかな。」


「じゃあ、お父さんは?うちはね、しがないサラリーマン!」
「しがないとか言わない。お父さん、頑張って会社起こして一応社長なんだから。」


「私のお父様は…石油や炭鉱を掘ってたよ。冒険するのが好きでよく外国に行ってた。」


家族……か。あの日からもう半年くらいが経つのか。



「そ、そういえば、立花さんは?どんなお父さんとお母さん?」

「私の本当の両親は私が幼いころ死んでる。私を育ててくれた両親は、パン屋をやってるよ。」


「あ……なんかごめん。」
「別にいいよ。もう…なんとも思ってないし。」


家族の話になり、かえって沈黙が続くようになってしまった。この空気、どうしたら……



「花月、もうそんな気を遣わなくていいよ。」
「え…?」

「私たちの仲を取り持とうとしてくれたんでしょ。」

「立花さんが私たちのことを嫌っているのは分かってるよ。だって……立花さんのことも……虐めていたから。」

「……。」



「別に、私はもう怒ってない。ただ…花月が2人といたのが心配だっただけ。それだけだよ。」

「さ、暗い話はお終い!女子会楽しもうー!!」

「結愛うるさい。」


「花月、今夜は楽しむことを考えよう。だって、2人は大切な友達…なんでしょ?」
「うん。」
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