生贄の花嫁      〜Lost girl〜
玄関で3人を見送るとさっきまでの賑やかだった屋敷が少し静かに感じた。


お正月……なんだかドタバタで時の流れが早かったけれどこんなに楽しく笑って過ごしたお正月は初めてだった。こっちの世界に来て、こんなにも生きていることを楽しく感じて毎日が鮮やかで本当に幸せを感じるな。


「…花月、こんなところにいたのか。」

「聖さん……。琉生くんたちを見送ったらなんか寂しくなっちゃって少し感傷に浸ってた。」


「…今日は…楽しかったか…?」

「うん……。なんだか不思議な感覚。皆で笑い合って賑やかに騒いで楽しかった。やっぱりここの屋敷が…皆が大好きだなって思ったよ。」

「…そうだな……。」


「そういえば、聖さんは何故ここへ…?」


「…お前に渡したいものと伝えたいことがあったから。」
「……?」


「…1日早いけど……これ、誕生石プレゼント。」
「わっ……きれいな花束。」

「…何をあげようか迷ったけど……お前との花束の思い出は寂しいものだったから嬉しいものにしたくて……嫌だったか…?」

「そんなことないよ!すっごく嬉しい。それに……今日が楽しすぎて明日が自分の誕生日だってこと忘れてたから驚きでいっぱい。」

「…花月、誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとな。俺と出逢ってくれてありがとう。」

「こちらこそ……出逢ってくれてありがとう。お祝いをしてくれて……ありがとう。」



隣に座った聖さんの肩に頭をのせると、聖さんは少し驚いていたけれど、大きな手で頭を撫でてくれた。


「くすぐったい……。」
「…お前、案外髪の毛やわらかいんだな。」

「くせ毛だけどね……。お母様譲りの髪の毛なの。」



「……明日…お前の誕生日……2人で祝ってやれなくなったんだ……ごめんな。」

「もしかして聖さんが伝えたかったことってそのこと…?そんなの全然気にしなくていいのに……こんなに素敵な花束もらって、楽しい1日を過ごせて、もう、今年の誕生日は十分幸せだよ。」

「………。」


「聖さん…?」



私の言葉に何も言わなくなる聖さん。私の言い方あまりよくなかったかな…?もう幸せだから明日のことなんて気にしなくていいよって言いたかっただけなのに……。



「…違うんだ……明日、祝えなくなったのは…俺と一緒に行ってほしいところがあるからなんだ。」
「行ってほしい……ところ…?」


「…俺と…俺と一緒に……両親と会ってほしい。」
「え……?」
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