生贄の花嫁 〜Lost girl〜
―奏side―
こんな新年からお客さんなんて珍しいと思って玄関に来たら花月と聖が帰ってきていた。今までとは違う重苦しい空気で。
「何、挨拶上手くいかなかったの?聖の家って結構寛大じゃなかったっけ?」
「…俺……フラれた。」
「フラれた…?何、喧嘩でもしたの…?」
「…花月を親に紹介して、いい雰囲気だったけど……海未絡みのことでトラブって…。」
海未って姫と同い年の聖の妹だっけ…?そういえばあの子酷いブラコンだったような……。
「…花月が距離を置こうって……俺、フラれたんだ。」
「要するにトラブって帰ってきたわけね。フラれるフラれないの話以前に聞くけどさ、聖、もしかして海未と花月に2人だけで話をさせた…?」
「…なんで分かるんだ…?」
やっぱりか……。兄命の妹とその兄の婚約者を2人で話をさせるなんて修羅場になるに決まっている。それに、花月の性格を考えると話し合いをしたのは良いものの、海未を気遣って聖との恋愛に関して後ろ向きになったってところかな。
「聖、お前ってほんと馬鹿。」
「…やっぱり俺何かしたんだな……。」
「聖さ、海未のことどう思ってる?」
「…どうって……大事な妹だ…。」
「じゃあ聞き方変える。花月と海未のどっちが大事なの?」
「…は……?どっちかなんて比べられるものじゃないだろ。花月は大事な恋人だし、海未は大事な妹だ。天秤にかけられるものじゃない。」
「ああもう、気づけよこの鈍男。お前は海未に対してきょうだいの感情しかないんだろうけど、海未は聖のことを本気の恋愛対象としてずっと見てたんだよ。結婚したいって昔から言ってただろ?」
「…そりゃ昔は言ってたけどそんなの子供のころの話で本気の恋愛なんかじゃ……」
「そう思うならはっきり海未に言ってやれよ!結婚なんてできないし花月のことしか見てないって。ただ単に花月を結婚相手だって紹介するだけじゃなくて、現実をきちんと教えてやれよ。」
「現実も何もきょうだいじゃ結婚できないってことくらい海未だってわかって…」
「わかってないから花月と海未がトラブったんだろ?聖、昔からそうやって無意識に人たらしで気をもたせるよね。別に今までは恋愛関係まで進展してなかったからどうでもいいと思ってたけど、今回は違うだろ。花月と結婚するのが前提でその了承を得るために実家に帰ったのになんで花月を不安にさせてるんだよ!」
「…じゃあ、俺が謝ればいいのか…?それで花月は納得してくれるのか…?」
今まで聖のことはお人好しで優しくて、悪い奴じゃないって思ってた。ちょっと人たらしが過ぎるところはあったけど、誰かを傷つけることはなかった。
でも今回のことだけは許せない。海未と聖の問題に花月を巻き込んで、不安にさせて……。
聖の胸ぐらをつかみ思い切り拳で聖の顔を殴る。鈍く重い音がした。こんな暴力に逃げるようじゃ最低な行為だって自分でも分かる。それでも…僕の中の怒りは鎮まらない。
「…奏、お前……。」
「聖、立てよ。お前が海未からも花月からも逃げ続けるって言うなら僕は容赦しない。謝って許してもらおうだなんて思うな!ほら、立てって言ってんだろ!」
「ちょっと、今の何の音…って奏、聖、あんたら何してるの!?悠夜、泰揮、ちょっと来て!」
こんなことしたって……花月も海未も喜ばない。きっと悲しむ。そんなの分かってる。分かってるけど……
「奏、聖から手を放しなさい。」
「悠夜、放せよ!」
「聖クン、傷を見せて。」
柚の声で悠夜と泰揮が来て僕たちの……僕の体を押さえる。少しずつ上がっていた息が落ち着いてきて自分が何をしたかを改めて見ても僕の心には聖への憎しみと怒りが消えない。
「2人共大広間へ来なさい。何があったのかをきちんと説明してもらいますよ。」
「話すことなんてない。」
「何が原因であってもこのような問題を起こしたからには事情を聞く必要があります。おとなしく来なさい。」
幸か不幸か、花月は今のこの状況に気が付いていない。こんなトラブル、花月にはできれば知られたくない。
「分かったから放して。全部話せばいいんだろ。」
こんな新年からお客さんなんて珍しいと思って玄関に来たら花月と聖が帰ってきていた。今までとは違う重苦しい空気で。
「何、挨拶上手くいかなかったの?聖の家って結構寛大じゃなかったっけ?」
「…俺……フラれた。」
「フラれた…?何、喧嘩でもしたの…?」
「…花月を親に紹介して、いい雰囲気だったけど……海未絡みのことでトラブって…。」
海未って姫と同い年の聖の妹だっけ…?そういえばあの子酷いブラコンだったような……。
「…花月が距離を置こうって……俺、フラれたんだ。」
「要するにトラブって帰ってきたわけね。フラれるフラれないの話以前に聞くけどさ、聖、もしかして海未と花月に2人だけで話をさせた…?」
「…なんで分かるんだ…?」
やっぱりか……。兄命の妹とその兄の婚約者を2人で話をさせるなんて修羅場になるに決まっている。それに、花月の性格を考えると話し合いをしたのは良いものの、海未を気遣って聖との恋愛に関して後ろ向きになったってところかな。
「聖、お前ってほんと馬鹿。」
「…やっぱり俺何かしたんだな……。」
「聖さ、海未のことどう思ってる?」
「…どうって……大事な妹だ…。」
「じゃあ聞き方変える。花月と海未のどっちが大事なの?」
「…は……?どっちかなんて比べられるものじゃないだろ。花月は大事な恋人だし、海未は大事な妹だ。天秤にかけられるものじゃない。」
「ああもう、気づけよこの鈍男。お前は海未に対してきょうだいの感情しかないんだろうけど、海未は聖のことを本気の恋愛対象としてずっと見てたんだよ。結婚したいって昔から言ってただろ?」
「…そりゃ昔は言ってたけどそんなの子供のころの話で本気の恋愛なんかじゃ……」
「そう思うならはっきり海未に言ってやれよ!結婚なんてできないし花月のことしか見てないって。ただ単に花月を結婚相手だって紹介するだけじゃなくて、現実をきちんと教えてやれよ。」
「現実も何もきょうだいじゃ結婚できないってことくらい海未だってわかって…」
「わかってないから花月と海未がトラブったんだろ?聖、昔からそうやって無意識に人たらしで気をもたせるよね。別に今までは恋愛関係まで進展してなかったからどうでもいいと思ってたけど、今回は違うだろ。花月と結婚するのが前提でその了承を得るために実家に帰ったのになんで花月を不安にさせてるんだよ!」
「…じゃあ、俺が謝ればいいのか…?それで花月は納得してくれるのか…?」
今まで聖のことはお人好しで優しくて、悪い奴じゃないって思ってた。ちょっと人たらしが過ぎるところはあったけど、誰かを傷つけることはなかった。
でも今回のことだけは許せない。海未と聖の問題に花月を巻き込んで、不安にさせて……。
聖の胸ぐらをつかみ思い切り拳で聖の顔を殴る。鈍く重い音がした。こんな暴力に逃げるようじゃ最低な行為だって自分でも分かる。それでも…僕の中の怒りは鎮まらない。
「…奏、お前……。」
「聖、立てよ。お前が海未からも花月からも逃げ続けるって言うなら僕は容赦しない。謝って許してもらおうだなんて思うな!ほら、立てって言ってんだろ!」
「ちょっと、今の何の音…って奏、聖、あんたら何してるの!?悠夜、泰揮、ちょっと来て!」
こんなことしたって……花月も海未も喜ばない。きっと悲しむ。そんなの分かってる。分かってるけど……
「奏、聖から手を放しなさい。」
「悠夜、放せよ!」
「聖クン、傷を見せて。」
柚の声で悠夜と泰揮が来て僕たちの……僕の体を押さえる。少しずつ上がっていた息が落ち着いてきて自分が何をしたかを改めて見ても僕の心には聖への憎しみと怒りが消えない。
「2人共大広間へ来なさい。何があったのかをきちんと説明してもらいますよ。」
「話すことなんてない。」
「何が原因であってもこのような問題を起こしたからには事情を聞く必要があります。おとなしく来なさい。」
幸か不幸か、花月は今のこの状況に気が付いていない。こんなトラブル、花月にはできれば知られたくない。
「分かったから放して。全部話せばいいんだろ。」