生贄の花嫁 〜Lost girl〜
第42話 伝える勇気
―奏side―
事の経緯を説明する。悠夜のことだから問答無用で僕が責め立てられるかと思ったけど、悠夜は僕を責めることも、聖を責めることもしなかった。
「奏は思うことを全て口に出し、結果としては暴力まで及びましたが、聖はどうしますか…?」
「…どうって……?」
「同じように口に出しますか、手を出しますか、と聞いているんです。」
「…いや、いい……。悪いのは全部俺なんだ。俺は花月を傷つけた。だから奏は俺を怒った…。」
「ご実家での問題ごとに関してはとやかく言いたくはありませんが一体何があったんですか?」
「…とやかくは言わないんじゃ……。」
「聞いて差し上げると言っているんです。新年早々これだけの騒ぎを起こされたんです。私たちには知る権利があります。」
悠夜がささやかに怒っている口調で聖に問いただす。さっきの騒動に関してやっぱり、というか確実に怒っているな、これは。悠夜の後ろに吹雪が見える。
「…お前らも俺の妹の海未のことは知ってるだろ?実家に帰って両親は問題なく結婚を了承してくれたんだが、花月を紹介したら海未が怒ったんだ。それで花月は海未と話をするって言ってくれたけど……上手くいかなかったみたいで……1度俺らは距離を置こうってなって……。頭が真っ白になって帰ってきたんだ。」
「で、花月と海未が話したことに関して聖があまりにも鈍くてイラついて僕が暴言吐いて殴ったわけ。」
「そういえば海未ちゃんって昔から聖クンにべったりだったわよね。結婚したいだなんて可愛いことも言っていたわよね……。」
「…………。」
「え、もしかして2人の喧嘩の原因って……。」
「そう…みたいなんだ。俺が海未に付き合えないことも結婚できないことも伝えていられていれば花月と海未がトラブることはなかった…。でも……俺は海未を突き放すようなこと…言えない。」
「じゃあ花月を捨てる…?結婚も付き合いもやめる?」
「そんなの嫌だ!俺は…花月を選びたい。だけど……海未を傷つける様なこと……」
「伝えられることは、伝えられるうちに伝えてください、聖さん。」
聖の言葉を遮るように後ろから、今1番聞かれたくない人の声が聞こえた。
「花月、いつからそこに……。」
「降りてきたのはさっきだよ。でも…奏と聖さんが揉めているのは全部聞こえてた……聖さんにバングルを緩めてもらっていたから。奏、私のために怒ってくれてありがとう。」
「僕は感謝されるようなことはしてないよ。怒りに任せて聖を殴ったんだから。」
「……ねえ、聖さん。私も聖さんと別れたいわけじゃないです。ただ…海未さんと話して、海未さんから聖さんを奪っていいのかなって思ったんです。家族を失うということは…大切な人が自分から離れて行ってしまうというのはとても寂しくて悲しいことです。きっと海未さんは私にじゃなくて聖さんにきちんと伝えてもらいたいんだと思います。」
「…でも俺は…。」
「伝えたいことがあるなら…伝えなくてはいけないことがあるなら、相手が生きているうちでないと伝えられません。死んでしまったら会うことも…話すこともできなくなってしまいます。謝ることもお礼を言うこともできなくなります。大切なことは失って初めて気づきます。私も…そうでした。だけど、聖さんにはそうであってほしくない。失ってからじゃ遅いんです。」
そうだよね…花月は家族も使用人も家も失って、後悔したことがあったんだよね。だから海未に対しても気を遣ったんだよね。
「聖、今すぐ海未のとこに行きなよ。今すぐやらないなら、花月は僕が貰う。」
「…そんな……。」
「僕は言っただろ!花月が欲しいなら聖が自分の全てを賭けて自分の力で手に入れろって。お前の覚悟を見せてみろ。」
「…わかった…。行ってくる。」
僕の言葉と共に部屋を飛び出していく聖。今回のことは聖自身が解決しなければ意味がない。花月が大切ならお前の覚悟を示せ。
「お前が憎まれ役を買うなんて珍しいな。」
「別にいいだろ、劉磨。」
「いや、見直したってことだ。お前が誰かのために何かをするって今までなかっただろ…?」
「そうだね……でもなんか悪い気分ではないね、こういうのも。」
事の経緯を説明する。悠夜のことだから問答無用で僕が責め立てられるかと思ったけど、悠夜は僕を責めることも、聖を責めることもしなかった。
「奏は思うことを全て口に出し、結果としては暴力まで及びましたが、聖はどうしますか…?」
「…どうって……?」
「同じように口に出しますか、手を出しますか、と聞いているんです。」
「…いや、いい……。悪いのは全部俺なんだ。俺は花月を傷つけた。だから奏は俺を怒った…。」
「ご実家での問題ごとに関してはとやかく言いたくはありませんが一体何があったんですか?」
「…とやかくは言わないんじゃ……。」
「聞いて差し上げると言っているんです。新年早々これだけの騒ぎを起こされたんです。私たちには知る権利があります。」
悠夜がささやかに怒っている口調で聖に問いただす。さっきの騒動に関してやっぱり、というか確実に怒っているな、これは。悠夜の後ろに吹雪が見える。
「…お前らも俺の妹の海未のことは知ってるだろ?実家に帰って両親は問題なく結婚を了承してくれたんだが、花月を紹介したら海未が怒ったんだ。それで花月は海未と話をするって言ってくれたけど……上手くいかなかったみたいで……1度俺らは距離を置こうってなって……。頭が真っ白になって帰ってきたんだ。」
「で、花月と海未が話したことに関して聖があまりにも鈍くてイラついて僕が暴言吐いて殴ったわけ。」
「そういえば海未ちゃんって昔から聖クンにべったりだったわよね。結婚したいだなんて可愛いことも言っていたわよね……。」
「…………。」
「え、もしかして2人の喧嘩の原因って……。」
「そう…みたいなんだ。俺が海未に付き合えないことも結婚できないことも伝えていられていれば花月と海未がトラブることはなかった…。でも……俺は海未を突き放すようなこと…言えない。」
「じゃあ花月を捨てる…?結婚も付き合いもやめる?」
「そんなの嫌だ!俺は…花月を選びたい。だけど……海未を傷つける様なこと……」
「伝えられることは、伝えられるうちに伝えてください、聖さん。」
聖の言葉を遮るように後ろから、今1番聞かれたくない人の声が聞こえた。
「花月、いつからそこに……。」
「降りてきたのはさっきだよ。でも…奏と聖さんが揉めているのは全部聞こえてた……聖さんにバングルを緩めてもらっていたから。奏、私のために怒ってくれてありがとう。」
「僕は感謝されるようなことはしてないよ。怒りに任せて聖を殴ったんだから。」
「……ねえ、聖さん。私も聖さんと別れたいわけじゃないです。ただ…海未さんと話して、海未さんから聖さんを奪っていいのかなって思ったんです。家族を失うということは…大切な人が自分から離れて行ってしまうというのはとても寂しくて悲しいことです。きっと海未さんは私にじゃなくて聖さんにきちんと伝えてもらいたいんだと思います。」
「…でも俺は…。」
「伝えたいことがあるなら…伝えなくてはいけないことがあるなら、相手が生きているうちでないと伝えられません。死んでしまったら会うことも…話すこともできなくなってしまいます。謝ることもお礼を言うこともできなくなります。大切なことは失って初めて気づきます。私も…そうでした。だけど、聖さんにはそうであってほしくない。失ってからじゃ遅いんです。」
そうだよね…花月は家族も使用人も家も失って、後悔したことがあったんだよね。だから海未に対しても気を遣ったんだよね。
「聖、今すぐ海未のとこに行きなよ。今すぐやらないなら、花月は僕が貰う。」
「…そんな……。」
「僕は言っただろ!花月が欲しいなら聖が自分の全てを賭けて自分の力で手に入れろって。お前の覚悟を見せてみろ。」
「…わかった…。行ってくる。」
僕の言葉と共に部屋を飛び出していく聖。今回のことは聖自身が解決しなければ意味がない。花月が大切ならお前の覚悟を示せ。
「お前が憎まれ役を買うなんて珍しいな。」
「別にいいだろ、劉磨。」
「いや、見直したってことだ。お前が誰かのために何かをするって今までなかっただろ…?」
「そうだね……でもなんか悪い気分ではないね、こういうのも。」