生贄の花嫁 〜Lost girl〜
劉磨くんの屋敷に着くと裏庭へと案内された。ここに来るのも久しぶりだな……。前に来たのはもう5年以上も前になるのか。あの頃はたくさん我が儘言って迷惑かけたっけ。
「劉磨くん、来てくれないか……。」
そうだよね、私の一方通行だったもんね。悲しいな……
「楓!楓!」
私の名前を呼んでくれる愛しい人の声が少しずつ近づいてくる。名前を呼んでもらえるだけでも嬉しいのに、来てくれたんだ……。
「劉磨くん……。」
「会えて…よかった。昨日は悪かったな。あんな言い方して。」
「私、やっぱり最後に全部伝えたくて来たの。私は、劉磨くんのことが好き。大好きなの!1番が無理なら2番でも3番でもいい。それすら無理なら犬扱いでもいい。」
「おい、落ち着け…」
「どんな扱いされてもいいから劉磨くんの側にいたいの!」
「ど、どうしよう…楓ちゃんが暴走して…止めなきゃ……」
「琉生くん、止めないで。もしかしたら、これが彼女の能力かもしれない。」
「え……?」
「劉磨くんは優しさなんて誰にでもあるって言っていたけど、私にとって劉磨くんの優しさが1番なの。馬鹿でもなんでもいいの。私は劉磨くんを信じてる。この気持ちだけは間違いなんてない!」
「言いたいことは……それだけか…?」
自分の心にあったものを全て吐き出した。もう、劉磨くんに会えなくなってもいいくらい言いたいことを全部言えた。
だから、さよなら……劉磨くん。
「楓、1度しか言わないからよく聞いてろ。俺は……お前のことが、好きだ。」
「え……?」
「お前がくれるもの全てが嬉しかった。俺だけを見てくれるのが嬉しかった。あんな酷いこと…言いたくなかった。」
「で、でも、私のことなんか……」
「お前に近づくのが怖かったんだ。俺が関わることでお前を不幸にしたくなかった。」
「本当に本当…?じゃあ、私とお付き合いしてくれる…?デートもしてくれる…?」
「お前が俺を拾ってくれるならいくらでもしてやるさ。」
「琉生はこれでよかったの?」
「僕にとっての幸せは、楓ちゃんが幸せになることでしたから。」
「随分とイケメンポイントが高いね。劉磨よりも十分紳士だわ。」
「そんなことないよ。ただ僕は願っただけ。それに楓ちゃんの能力が開花したならよかった…。」
「まさか彼女の能力が『愛』だなんてね。人を慈しみ愛する心、人を大切だと思う心。あの頃の彼女じゃ開花しないわけだ。」
「柚さんこそよかったの…?付き合っていたんでしょう?」
「私は劉磨を不幸にしちゃったからね。楓ちゃんがそれを幸せへと塗り替えてくれることを祈るよ。」
「ねえ劉磨くん。」
「なんだ…?」
「劉磨くんの血、吸ってもいい…?」
「覚醒……したのか……?」
「そうみたい。それに…私の能力、分かったかも。」
「どんな能力なんだ?」
「それはね……秘密だよ。」
この半年後に私は劉磨くんの子供を身籠って結婚することになる。劉磨くんは子供が大好きな親バカになって、私はそれを笑って幸せな家庭を築いていく。
でもそれはまだまだ先の話。
―終―
「劉磨くん、来てくれないか……。」
そうだよね、私の一方通行だったもんね。悲しいな……
「楓!楓!」
私の名前を呼んでくれる愛しい人の声が少しずつ近づいてくる。名前を呼んでもらえるだけでも嬉しいのに、来てくれたんだ……。
「劉磨くん……。」
「会えて…よかった。昨日は悪かったな。あんな言い方して。」
「私、やっぱり最後に全部伝えたくて来たの。私は、劉磨くんのことが好き。大好きなの!1番が無理なら2番でも3番でもいい。それすら無理なら犬扱いでもいい。」
「おい、落ち着け…」
「どんな扱いされてもいいから劉磨くんの側にいたいの!」
「ど、どうしよう…楓ちゃんが暴走して…止めなきゃ……」
「琉生くん、止めないで。もしかしたら、これが彼女の能力かもしれない。」
「え……?」
「劉磨くんは優しさなんて誰にでもあるって言っていたけど、私にとって劉磨くんの優しさが1番なの。馬鹿でもなんでもいいの。私は劉磨くんを信じてる。この気持ちだけは間違いなんてない!」
「言いたいことは……それだけか…?」
自分の心にあったものを全て吐き出した。もう、劉磨くんに会えなくなってもいいくらい言いたいことを全部言えた。
だから、さよなら……劉磨くん。
「楓、1度しか言わないからよく聞いてろ。俺は……お前のことが、好きだ。」
「え……?」
「お前がくれるもの全てが嬉しかった。俺だけを見てくれるのが嬉しかった。あんな酷いこと…言いたくなかった。」
「で、でも、私のことなんか……」
「お前に近づくのが怖かったんだ。俺が関わることでお前を不幸にしたくなかった。」
「本当に本当…?じゃあ、私とお付き合いしてくれる…?デートもしてくれる…?」
「お前が俺を拾ってくれるならいくらでもしてやるさ。」
「琉生はこれでよかったの?」
「僕にとっての幸せは、楓ちゃんが幸せになることでしたから。」
「随分とイケメンポイントが高いね。劉磨よりも十分紳士だわ。」
「そんなことないよ。ただ僕は願っただけ。それに楓ちゃんの能力が開花したならよかった…。」
「まさか彼女の能力が『愛』だなんてね。人を慈しみ愛する心、人を大切だと思う心。あの頃の彼女じゃ開花しないわけだ。」
「柚さんこそよかったの…?付き合っていたんでしょう?」
「私は劉磨を不幸にしちゃったからね。楓ちゃんがそれを幸せへと塗り替えてくれることを祈るよ。」
「ねえ劉磨くん。」
「なんだ…?」
「劉磨くんの血、吸ってもいい…?」
「覚醒……したのか……?」
「そうみたい。それに…私の能力、分かったかも。」
「どんな能力なんだ?」
「それはね……秘密だよ。」
この半年後に私は劉磨くんの子供を身籠って結婚することになる。劉磨くんは子供が大好きな親バカになって、私はそれを笑って幸せな家庭を築いていく。
でもそれはまだまだ先の話。
―終―