生贄の花嫁      〜Lost girl〜
リムジンの中は相変わらず賑やか…。そんな中隣に座っている桃瀬さんだけが私の顔を凝視している。

「花月…。」

「どうしたんですか…?」
「あのさ、僕とテストの勝負しない?」

「勝負…?」
「全教科の総合得点、高かった方の勝ち。負けた方は勝った方の言うことを聞くの。」
「言うことを聞くって例えば…?」


そういうと奏が顔を赤くして私の耳元で囁く。


「もし、僕が勝ったら……デートしてよ…。」

「デート…?」
「え!?」

私の一言で皆さんが一斉にこちらを振り向く。私も驚いて皆さんのほうを向いてしまった。


「デートって何かしら、花月チャン?」
「花月と賭けをするんだよ~。もし僕が勝ったら花月にデートしてもらう。」
「あの……私いいなんて言ってな…。」

「花月は、僕のこと嫌いなの?」

うっ…桃瀬さんのうるうる攻撃…。デートが何なのか分からないけれど、こんな捨てられている子犬のような目をされたら嫌とは言えない。


「私が勝ったらデートしなくていいんですよね…?」
「うん!まあ、勝つのは僕だけどね。」

テストにはこんな賭けがあるのか…定期テストって大変だ……。
-------------------------------------------------------------------------------------

「手ごたえ…どうだった?」
「ん~…数学はちょっと自信あるかも。あとはそれなりにできたよ。」

「花月、お前は?」
「どの科目も問題なかったですよ。」

「天才の答え方だな…。」

「俺も割と行けた気がする…。」

「劉磨クンがそんなこと言うなんて珍しいわね。台風でもくるのかしら?」
「俺だって頑張るときは頑張るんだよ。」

「僕、明日の残りの科目が自信あるから、絶対花月に勝てる気がする。」

「そういや、花月が勝ったらどうするんだ?」
「そうですね…何も考えてなかったです。」

「花月への接触禁止でいいんじゃねえの?」

「そんなの、僕寂しくて死んじゃう…。」

「アラ、見てるほうは楽しいものよ。ね、悠夜。」
「全く…くだらないことでも成績が上がるなら良しとしましょう。」


そんな会話をしている間に屋敷についていた。
----------------------------------------------------------------------------------------

「ただいま~!」

「奏クンはいつも元気ね。」

「花月、今日も俺の部屋来るか…?」
「お邪魔していいなら…。」
「む…だったら、皆で聖の部屋で勉強しよう!」
「桃瀬さんもですか…?」
「聖にばっかり良い思いさせたくない‼」

「いい思いって…。」

「花月は鈍感すぎなんだよ~!」
「え、ちょ…桃瀬さん⁉」


階段を駆け上がって桃瀬さんは自分の部屋に籠ってしまった。一体何なんだか…



「花月チャンも大変ね…男を誑かせちゃうなんて。」
「泰揮クン、誑かすって何のことでしょうか…?」

「あらまぁ、鈍感ちゃんね。まだ知らなくていいのよ。見ているほうは楽しいから。」

こういうとき泰揮クンは笑ってごまかしてしまう。私のせいならそう言ってもらえたほうがいいんだけどな…

「部屋で待ってるから…着替えてくるか?」
「うん、そうする。また、後でね。」

「聖…あのさ、俺も…。」

「劉磨、なんか変わったな…。」
「な、なんだよ…。」

「お前も鈍感か…。」
< 33 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop