生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―奏side―

「みんな、大変。花月が…。」
「どうした…?」
「花月の首に、跡が…。」

「誰かが吸っちゃったのかしら?もう、思春期っていやね。」

「冗談を言っている場合ではありません。発熱、発汗、わずかに痙攣もしています。それに牙の跡というよりは赤い斑点のような…。」
「赤い斑点…ですって……!?早くソファに花月チャンを寝かせて。」


悠夜の言葉に血相を変え焦る泰揮…こんな泰揮、初めて見た。

「泰揮、どうしました?」
「早くしないと命にかかわる。」
「何か知っているのですね…?」

「話はあとだ。聖、毛布を持ってこい。劉磨は氷嚢とお湯の準備を。俺は薬を持ってくる。」


てきぱきと泰揮が指示を出す。泰揮がいつもとは違う男口調になるのは感情が昂ったときだけ。誰1人状況が分からずただ従う。

「僕と悠夜は?」

「悠夜は5分おきに脈をはかって。奏は…奏クンは、花月チャンを励ましてあげて。」


それだけ言うと泰揮は研究室へ行ってしまった。


みんなが役割を与えられた中、僕に与えられたのは役に立てないこと。こういうときいつも僕は何もできない。僕は…なんて役立たずなんだ。


「…なで、奏。」
「はっ…ごめん、悠夜。」

「奏、しっかりしなさい。今は落ち込んでいる場合ではありません、彼女を元気づけることができるのは彼女のことをよく見ている貴方だけでしょう。」
「う、うん。分かった。」
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―??—

「白梨花月か…ご主人様の言っていた通りいい香りだったな。」

「でも、まさかあんな簡単に毒針が仕込めるとは思いませんでした。このような形で宣戦布告をするなんて、悪趣味ですね……。」

「それにしても、本当なのかな、あの子が生贄の花嫁って。。今度こそ本物だよね……?」

「一度屋敷へ戻ろう。まもなく宴が始まる。命をかけた血まみれの狂想曲が。楽しみだなぁ…。」
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