生贄の花嫁 〜Lost girl〜
騒いでいた人たちがいなくなると大広間はいつもの静けさに戻った。
「まったく…。」
「花月チャン、昨日のこと詳しく教えてくれる?」
「はい。あまり細かくは覚えていませんが。」
「昨夜、一体何が起きたのですか?」
「夕食の後、私が部屋で勉強していたら奏が部屋に泊まってほしいと私のところを訪ねてきたんです。断りづらかったので奏の部屋に行くことになりました。」
「それは何時ごろか覚えていますか?」
「たしか、20:00過ぎだったかと思います。」
「それでそのあとは?」
「奏の部屋に入って少しすると奏に押し倒され血を求められました。最初は冗談かと思ったんですが、そのとき奏の瞳の色は青く光っていて奏じゃないということと私の屋敷を襲った吸血鬼に近いということを感じました。すると奏は…奏に似たその人は、いきなり私のシャツを破りました。焦って彼を突き飛ばして部屋を出ました。早く皆さんに伝えなければと思い走っていたら勢い余ったこともあり階段から転げ落ちました。そこで、悠夜さんが見に来てくださったんです。」
「やっぱり…私と悠夜の読みは当たっていたのね。もし花月チャンが見た奏クンが白蛇族の変装だとしたら、本物の奏クンと花月チャンが見た偽物の奏クンが同時に存在することは可能か…。」
「あの…白蛇族ってなんですか…・」
「白蛇族は毒針を注入して相手の記憶や体を意のままに動かすことや変装を得意とする種族。その中には…花月チャンの家族を襲った下層吸血鬼たちと関わりのある吸血鬼がいる可能性が高いわ。」
「そのことで昨日書庫を調べましたが白蛇族に纏わる本がすべて紛失していました。」
「本が紛失…?そんなのありえないわ。この家はアタシたちとアタシたちが許可した人しか入れないつくりになっている。もし誰かが無断で入れば結界が何らかの作動をするはずだわ。」
「じゃあ…一体誰が…?」
「まさか…アタシたちのうちの誰かが…?」
「バカなことを言うのはやめなさい。」
「でも、その可能性しか……。」
気まずい雰囲気になってしまった。あれだけ仲が良いのだから、身内を…仲間を疑いたくないことはわかる。
でも誰かが…仲間を裏切ろうとしているのだったら…それは止めなければいけない。
「お2人を信じてお願いがあります。もし、誰かが私を殺そうとしているのなら…それを突き止めるために私を囮として使ってください。」
「それはできないわ。」
「でも、私の血が皆さんにとっていいエサなら絶対に犯人を捜すのに役立つはずです。それに…間違ったことをしようとしているなら止めないと…。」
「できるわけないでしょう。ましてや震えている貴女を見て強要させるほど愚かではありません。」
「それに、アタシたちの中には犯人はいないって信じるわ。だから花月チャンもアタシ達のこと信じてくれる?」
2人の表情が切なくなる。信じてたいと思っても心の中では不安なんだ…。それなら私は…信じなきゃ。2人のためにも…みんなのためにも。
「あの、私もお2人にお聞きしたいことがあるのですが。」
「聞きたいこと…ああ、柚のことですか?」
険しい表情を浮かべる悠夜さん。まだ私が触れてはいけない領域なんだ。
「そのことではなく、皆さんのことです。」
「アタシ達のこと?」
2人は不思議そうな顔をしている。
「皆さんにもご家族はいらっしゃると思うのですが、なぜこの屋敷で生活をしているのですか?」
「ああ、そのことですか。私たち純血種は貴重な伯爵候補なので危険が及ばぬよう協会の目が届くところで集団で生活をすることが義務付けられています。親元で生活をする者もいますがセキュリティの弱さゆえに家族を失うものが多くたいていの純血種は家を出ます。」
「そう…なんですね。寂しくないのですか…?」
「寂しさ…どうですかね。幼いころはそのような感情を持つものもいたとは思いますが人生のほとんどを共に過ごしていれば今のこの屋敷が家族のようなものです。」
「それに、こうやってみんなで生活していれば吸血鬼協会から生活に必要なものは支給されるのよ…。」
泰揮クンの顔が少し切なくなる。有難いようなことなのに何か不安でもあるのかな…?
「さあ、これ以上話していたら体に響くわ。話は終わりにしましょ。花月チャン、手を出して。」
ニコニコ笑い自分のポケットから何かを取り出す泰揮クン。
「それは…?」
「GPSつきのイヤリングよ。これをつけておいてもらえる?」
「これをつけていていただければ、もし貴女に何かあったときすぐに居場所を特定できます。学校も申請すれば装飾品をつけることは可能ですので。」
「すごく、きれいですね。」
「当然です。泰揮が作ったものなのですから。」
「素敵なイヤリングをありがとうございます。」
「うふ、ありがとう。さ、これ以上は体に響くからお部屋で休んでね。」
「何かあったらすぐに呼んでください。」
「まったく…。」
「花月チャン、昨日のこと詳しく教えてくれる?」
「はい。あまり細かくは覚えていませんが。」
「昨夜、一体何が起きたのですか?」
「夕食の後、私が部屋で勉強していたら奏が部屋に泊まってほしいと私のところを訪ねてきたんです。断りづらかったので奏の部屋に行くことになりました。」
「それは何時ごろか覚えていますか?」
「たしか、20:00過ぎだったかと思います。」
「それでそのあとは?」
「奏の部屋に入って少しすると奏に押し倒され血を求められました。最初は冗談かと思ったんですが、そのとき奏の瞳の色は青く光っていて奏じゃないということと私の屋敷を襲った吸血鬼に近いということを感じました。すると奏は…奏に似たその人は、いきなり私のシャツを破りました。焦って彼を突き飛ばして部屋を出ました。早く皆さんに伝えなければと思い走っていたら勢い余ったこともあり階段から転げ落ちました。そこで、悠夜さんが見に来てくださったんです。」
「やっぱり…私と悠夜の読みは当たっていたのね。もし花月チャンが見た奏クンが白蛇族の変装だとしたら、本物の奏クンと花月チャンが見た偽物の奏クンが同時に存在することは可能か…。」
「あの…白蛇族ってなんですか…・」
「白蛇族は毒針を注入して相手の記憶や体を意のままに動かすことや変装を得意とする種族。その中には…花月チャンの家族を襲った下層吸血鬼たちと関わりのある吸血鬼がいる可能性が高いわ。」
「そのことで昨日書庫を調べましたが白蛇族に纏わる本がすべて紛失していました。」
「本が紛失…?そんなのありえないわ。この家はアタシたちとアタシたちが許可した人しか入れないつくりになっている。もし誰かが無断で入れば結界が何らかの作動をするはずだわ。」
「じゃあ…一体誰が…?」
「まさか…アタシたちのうちの誰かが…?」
「バカなことを言うのはやめなさい。」
「でも、その可能性しか……。」
気まずい雰囲気になってしまった。あれだけ仲が良いのだから、身内を…仲間を疑いたくないことはわかる。
でも誰かが…仲間を裏切ろうとしているのだったら…それは止めなければいけない。
「お2人を信じてお願いがあります。もし、誰かが私を殺そうとしているのなら…それを突き止めるために私を囮として使ってください。」
「それはできないわ。」
「でも、私の血が皆さんにとっていいエサなら絶対に犯人を捜すのに役立つはずです。それに…間違ったことをしようとしているなら止めないと…。」
「できるわけないでしょう。ましてや震えている貴女を見て強要させるほど愚かではありません。」
「それに、アタシたちの中には犯人はいないって信じるわ。だから花月チャンもアタシ達のこと信じてくれる?」
2人の表情が切なくなる。信じてたいと思っても心の中では不安なんだ…。それなら私は…信じなきゃ。2人のためにも…みんなのためにも。
「あの、私もお2人にお聞きしたいことがあるのですが。」
「聞きたいこと…ああ、柚のことですか?」
険しい表情を浮かべる悠夜さん。まだ私が触れてはいけない領域なんだ。
「そのことではなく、皆さんのことです。」
「アタシ達のこと?」
2人は不思議そうな顔をしている。
「皆さんにもご家族はいらっしゃると思うのですが、なぜこの屋敷で生活をしているのですか?」
「ああ、そのことですか。私たち純血種は貴重な伯爵候補なので危険が及ばぬよう協会の目が届くところで集団で生活をすることが義務付けられています。親元で生活をする者もいますがセキュリティの弱さゆえに家族を失うものが多くたいていの純血種は家を出ます。」
「そう…なんですね。寂しくないのですか…?」
「寂しさ…どうですかね。幼いころはそのような感情を持つものもいたとは思いますが人生のほとんどを共に過ごしていれば今のこの屋敷が家族のようなものです。」
「それに、こうやってみんなで生活していれば吸血鬼協会から生活に必要なものは支給されるのよ…。」
泰揮クンの顔が少し切なくなる。有難いようなことなのに何か不安でもあるのかな…?
「さあ、これ以上話していたら体に響くわ。話は終わりにしましょ。花月チャン、手を出して。」
ニコニコ笑い自分のポケットから何かを取り出す泰揮クン。
「それは…?」
「GPSつきのイヤリングよ。これをつけておいてもらえる?」
「これをつけていていただければ、もし貴女に何かあったときすぐに居場所を特定できます。学校も申請すれば装飾品をつけることは可能ですので。」
「すごく、きれいですね。」
「当然です。泰揮が作ったものなのですから。」
「素敵なイヤリングをありがとうございます。」
「うふ、ありがとう。さ、これ以上は体に響くからお部屋で休んでね。」
「何かあったらすぐに呼んでください。」