生贄の花嫁 〜Lost girl〜
次の日から僕も学校に行かなくなった。起きることもご飯も食べることも歩くこともできなくなった。それでも、お父さんとお母さんは変わらず仕事に行っていた。
でもある時、2人が喧嘩をした。
「お前がきちんと世話をしないから輝石が学校に行かないんだ。女は家事だけこなしてればいいんだよ。」
「あんたの稼ぎが少ないから私が働かなきゃいけないんでしょう!文句言ってる暇があるならお金を稼ぎなさいよ!」
喧嘩の理由は僕のせい。僕が学校に行かないから喧嘩をした。優花ちゃんの時と一緒だ。僕のせいで誰かが傷つく。
「もういいわ、離婚しましょう。輝石はあんたに渡すわ。いたって邪魔なだけだし。」
「ふざけんなよ!あんなクソガキいらねえんだよ。」
「私だっていらないわよ。父親なんだから息子の面倒見なさいよ。」
お母さんは、お父さんに僕を"押し付けて"家を出て行ってしまった。
その後はお父さんと2人暮らしをしていたけど、お父さんはほとんど家に帰ってこなかった。食べるものもほとんどなくて、僕はお店から食べ物を盗むようになった。警察に捕まったときだけお父さんは僕の面倒を見るようになった。
でも、家の中に入った瞬間、お父さんは僕を殴るようになった。蹴るようになった。
「お前さえいなければ……お前さえいなければ……。」
その言葉と共に繰り返される虐待の日々。傷だらけになった僕は、外に出してもらえなくなった。
でもあるときから、お父さんは仕事をしに外へ出なくなった。月に何回かしか外に行かないのに欠かさず3食の食事が出るようになった。会話なんてしなかったけど、なぜかいつもお父さんは機嫌が良くて、でも、いきなり怒り出すときもあった。怒ったときだけ殴られることはあったけど、お母さんが出て行った後に比べれば回数は減っていた。
「白銀剛士だな。覚せい剤取締法違反及び大麻所持により逮捕する。」
小学6年生になる頃、お父さんが警察に連れていかれた。お父さんは重度の薬物依存症になっていたらしい。捜査の関係で警察の人が家に来ることが増えた。でも、お父さんが返ってくることは1度も無かった。
外に出ていいのかもわからない。どうやって生きていけばいいのか分からない。だから、家に来た警察の人に聞いた。
「なんで僕のお父さんは帰ってこないの?」
「君のお父さんはね、壊れちゃったんだよ。働くことも、君といることも、生きていることも苦しくなって、やってはいけないことをしてしまったんだよ。」
お父さんは生きていることに疲れてしまった。僕といることが苦しくなってしまった。
僕のせいでまた人を傷つけた。優花ちゃんも、お母さんも、お父さんも……皆、僕のせいで傷ついた。僕がいたから壊れてしまった。だったら僕が消えるしかない。これから先僕はもっとたくさんの人を傷つける。その前に、僕はこの世から消えなければいけない。
僕は生まれてきちゃいけない子だったんだ。
僕も、生きていることがつらくなった。だから、12歳の誕生日に手首を切って死のうと思った。
僕の人生には後悔しかない。僕がダメな子だったから、名前のような大きな人間にはなれなかったから人を傷つけて、皆を不幸にした。
僕は罪人だ。
「それで死んで何になる……?」
手首を切ろうとしたとき、知らない人の声が聞こえた。声のする方を振り向くと、白髪交じりのおじさんが立っていた。
「僕は罪人だ。生きていても人を不幸にしかしない。だから死にたい。」
「それで本当に後悔しないか?」
「今まで僕のせいで傷ついた人がいるんだ。僕は消えなければいけない。」
「お前の話を聞く限り、天国には行けないだろう。死んで地獄へ行くことを望むのか?」
「それが僕が受けるべき罰だから。」
「わしはそうは思わん。人は死んだら感情が無くなるという。そうしたら、果たして死ぬことに意味はあるのか?罰を受けるために地獄に行ったとしても、お前は何も思わない、何も思わず成仏もできず彷徨うことになる。そして思うことはこれだけ……死ななければよかったと。そう思わんかい?」
「…僕に生きろっていうの…?」
「こういうのはどうだ。そんなに自分を罰したいのなら、終わりのない人生を生きるというのは。」
「……終わりのない人生……?」
「ああ。周りの人が死に行く中、自分だけは決して死ぬことのない、そして生まれ変わることもない、永遠の命。吸血鬼としての人生。」
「……本当に一生死なないの…?」
「ああ。お前の親が死んでも、友達が死んでもお前だけは何十年、何百年と生き続ける。」
一生、罪を背負って自分を罰することができるって事……?死ぬこともなく、生まれ変わることもない。きっと、優花ちゃんの生まれ変わりにも会えない。もう一生、同じ時間を生きていける人はいないかもしれない。
それでも……一生罪を償うことができるなら……
「……僕、吸血鬼になる。それで罰することができるなら。」
「交渉成立だ。わしの名前は黒鬼院霧想。老いぼれた吸血鬼じゃ。」
「……僕は…輝石。白銀輝石。」
でもある時、2人が喧嘩をした。
「お前がきちんと世話をしないから輝石が学校に行かないんだ。女は家事だけこなしてればいいんだよ。」
「あんたの稼ぎが少ないから私が働かなきゃいけないんでしょう!文句言ってる暇があるならお金を稼ぎなさいよ!」
喧嘩の理由は僕のせい。僕が学校に行かないから喧嘩をした。優花ちゃんの時と一緒だ。僕のせいで誰かが傷つく。
「もういいわ、離婚しましょう。輝石はあんたに渡すわ。いたって邪魔なだけだし。」
「ふざけんなよ!あんなクソガキいらねえんだよ。」
「私だっていらないわよ。父親なんだから息子の面倒見なさいよ。」
お母さんは、お父さんに僕を"押し付けて"家を出て行ってしまった。
その後はお父さんと2人暮らしをしていたけど、お父さんはほとんど家に帰ってこなかった。食べるものもほとんどなくて、僕はお店から食べ物を盗むようになった。警察に捕まったときだけお父さんは僕の面倒を見るようになった。
でも、家の中に入った瞬間、お父さんは僕を殴るようになった。蹴るようになった。
「お前さえいなければ……お前さえいなければ……。」
その言葉と共に繰り返される虐待の日々。傷だらけになった僕は、外に出してもらえなくなった。
でもあるときから、お父さんは仕事をしに外へ出なくなった。月に何回かしか外に行かないのに欠かさず3食の食事が出るようになった。会話なんてしなかったけど、なぜかいつもお父さんは機嫌が良くて、でも、いきなり怒り出すときもあった。怒ったときだけ殴られることはあったけど、お母さんが出て行った後に比べれば回数は減っていた。
「白銀剛士だな。覚せい剤取締法違反及び大麻所持により逮捕する。」
小学6年生になる頃、お父さんが警察に連れていかれた。お父さんは重度の薬物依存症になっていたらしい。捜査の関係で警察の人が家に来ることが増えた。でも、お父さんが返ってくることは1度も無かった。
外に出ていいのかもわからない。どうやって生きていけばいいのか分からない。だから、家に来た警察の人に聞いた。
「なんで僕のお父さんは帰ってこないの?」
「君のお父さんはね、壊れちゃったんだよ。働くことも、君といることも、生きていることも苦しくなって、やってはいけないことをしてしまったんだよ。」
お父さんは生きていることに疲れてしまった。僕といることが苦しくなってしまった。
僕のせいでまた人を傷つけた。優花ちゃんも、お母さんも、お父さんも……皆、僕のせいで傷ついた。僕がいたから壊れてしまった。だったら僕が消えるしかない。これから先僕はもっとたくさんの人を傷つける。その前に、僕はこの世から消えなければいけない。
僕は生まれてきちゃいけない子だったんだ。
僕も、生きていることがつらくなった。だから、12歳の誕生日に手首を切って死のうと思った。
僕の人生には後悔しかない。僕がダメな子だったから、名前のような大きな人間にはなれなかったから人を傷つけて、皆を不幸にした。
僕は罪人だ。
「それで死んで何になる……?」
手首を切ろうとしたとき、知らない人の声が聞こえた。声のする方を振り向くと、白髪交じりのおじさんが立っていた。
「僕は罪人だ。生きていても人を不幸にしかしない。だから死にたい。」
「それで本当に後悔しないか?」
「今まで僕のせいで傷ついた人がいるんだ。僕は消えなければいけない。」
「お前の話を聞く限り、天国には行けないだろう。死んで地獄へ行くことを望むのか?」
「それが僕が受けるべき罰だから。」
「わしはそうは思わん。人は死んだら感情が無くなるという。そうしたら、果たして死ぬことに意味はあるのか?罰を受けるために地獄に行ったとしても、お前は何も思わない、何も思わず成仏もできず彷徨うことになる。そして思うことはこれだけ……死ななければよかったと。そう思わんかい?」
「…僕に生きろっていうの…?」
「こういうのはどうだ。そんなに自分を罰したいのなら、終わりのない人生を生きるというのは。」
「……終わりのない人生……?」
「ああ。周りの人が死に行く中、自分だけは決して死ぬことのない、そして生まれ変わることもない、永遠の命。吸血鬼としての人生。」
「……本当に一生死なないの…?」
「ああ。お前の親が死んでも、友達が死んでもお前だけは何十年、何百年と生き続ける。」
一生、罪を背負って自分を罰することができるって事……?死ぬこともなく、生まれ変わることもない。きっと、優花ちゃんの生まれ変わりにも会えない。もう一生、同じ時間を生きていける人はいないかもしれない。
それでも……一生罪を償うことができるなら……
「……僕、吸血鬼になる。それで罰することができるなら。」
「交渉成立だ。わしの名前は黒鬼院霧想。老いぼれた吸血鬼じゃ。」
「……僕は…輝石。白銀輝石。」