生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「そのとき劉磨がすごくビビってて面白かったんだ。今のあいつからは考えられないだろ。」

「劉磨さんが?普段あんなに強気なのに?」



聖さんと暴露話というものをしている。淡々と話す人なんだと思っていたけれど意外とそうでもないらしい。


「びっくりといえば、前に部屋でキャンドル焚いてたらボヤ騒ぎ起こしたんだよね。悠夜さんに二度とキャンドル焚かないでくださいって言われちゃった…。」

「花月もキャンドル好きなのか?俺も好き。」



意外なことに聖さんと私は趣味嗜好が合うのか共通点が多く話が尽きない。


「俺もここに来たばかりの時はキャンドル焚くなって言われた。でもバレないように焚いてる。たまにバレると持っていかれちゃうけど。」

「聖さんはどういうのが好き?ミントとか、柑橘系?」


「どっちも好きだ。基本的には自分でブレンドしてる。」

「え、これ、全部聖さんが作ったの?」

「そういうことになるな…。これ、よかったらもらってくれ。一番自信があるやつなんだ。」

「そんなにいいものもらえないよ。せっかくの出来なら自分で使わないと。」


「じゃあ…今つける。そうすれば2人で楽しめる。」



聖さんは無意識にかわいいことを言う。これがギャップというやつだろうか。



「湯が沸いた…。お茶淹れてくる。」

「私も淹れてみたい。やってみてもいい?」



「もちろんだ。でも熱いから気をつけろ…。」


ポットを手渡され両手で持つ。


聖さんはあんなに軽々と持っていたけど結構重たい。


「熱!」


誤って手にお湯を引かけてしまった。ヒリヒリと痛みがある。


「痛…。」

「花月。」


ペロッ


聖さんが私の手を取り火傷したところを舐めると痛みは少しずつ引いていった。


「治った…。」
「あ…ありがとう。」

「怪我したら困るから…あとは俺がやる。」


カップにお茶を注ぐ聖さんはすごく綺麗だ。これが絵になるってことなんだろうな。



「これ、花月の分。熱いから気をつけろ。」

「いただきます。」




息を吹きかけゆっくりと口の中にいれていく。すると甘い香りが鼻孔をくすぐった。




「すごくいい香り。」

「だろ…?これ、今のお気に入り。」


「前から思ってたけれど、聖さんはおしゃれだね。洋服はもちろんだけど、こういう飲み物とか、使っている小物とか。」

「最近はこういうの、落ち着くから集めてる。」

「私、聖さんと一緒に買い物したい。いろいろなものを知ってそう。」

「今度行こう。約束。」



差し出された小指。自分の小指を絡ませ指切りをした。
< 84 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop