生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「花月は…ここにきてからしばらく経つけど慣れたか…?」

「う~ん…最初は怖かったし吸血鬼なんてって…思っていたけれど、皆と過ごして不安は減ってきたかな。」


「吸血鬼は血を吸うイメージが強いって言われるけど…基本的には普通の人間みたいな生活してる。それに、悪い奴だけじゃない。」

「私、家にいたときは外に出たことがなかったから友達…とかも知らなかった。ここにきて人と話すことの楽しさを知ることができた。すごく温かくて本当の家族みたい。」


「みたいじゃなくて……家族。花月が来て皆変わった。劉磨は過去のことに向き合えるようになった。奏は甘えるだけじゃなく強くなった。泰揮は部屋から出てくるようになった。悠夜は表情を表に出すようになった。俺も…こうやって話せるようになった。花月がいてくれるから…毎日が楽しい。来てくれて…ありがとう。」



ありがとう。と何度も言い頭を撫でてくれる聖さん。



「頭…熱いな。子供みたいだ。……抱きしめてもいいか…?」
「え…?」

「あ、いや…昔の名残で…。俺、小さいころ外国に住んでたから…ハグする癖がある。嫌なら…しない。」

「そういうことなら…大歓迎だよ。私も海外で暮らしていたことあるからハグとか挨拶のキスはするし。でも何だかんだ言って日本が1番好きだけど。」



聖さんの背中は広い。ハグをしても私の腕は後ろまで届かない。



「お茶も飲んだし…昼寝したい。」

「あ、じゃあ私は部屋に戻…」
「ここに…いてほしい。」


え……?


「俺のベッド…使っていい。ベッドの中なら温かい。花月と寝たい。駄目か…?」



落ち込んだような顔をする聖さん。奏とは違う甘え方で断りにくい。


それに…聖さんならたぶん安全だよね…?



ベッドに入ってもずっと手をつないでいる。こんなにも男の人との距離が近いのは初めてかもしれない。


心臓の鼓動が早くなる。


「寒くないか…?」

「大丈夫だよ、ありがとう。聖さんはいつも優しいね。」

「え…?」

「聖さんと話していると、いつも安心します。だからいつも楽しくてたくさん話してしまいます。」

「安心…?」


「うん…お兄さんができたみたい。」




「花月…俺だって男だ。そんな簡単に無防備になるな。今だってこうすれば…花月にどんなことでもできる。」



聖さんがグッと顔を近づけてくる。顔の横には彼の手があり覆いかぶさるように私の上に乗る。

(花月)「聖…さん…?」
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