生贄の花嫁      〜Lost girl〜
急いで階段を駆け下りると玄関にはもう皆が集まっていた。


「何があったんですか…?」

「わかりません……ただ、吸血鬼の臭いだけはあります。そして、血の臭いも…。」



「花月は下がってろ。」
「うん……。」



劉磨さんが恐る恐るドアを開けていく。




すると、赤い塊が勢いよく劉磨に倒れこんできた。


いや……赤い塊なんかじゃない。全身血だらけの彼は……



「琉生くん…?」

「花…月…ちゃ……。」

「何でこいつがここに…?また花月を攫いに来たのか?」



「…違…う…。」
「だまされるもんか…出ていけ。」


「運べ…。大広間へ早く運べ!」
「でも泰揮……。」

「危険な状態だってことはお前でもわかるだろ!?花月のことばかり考えるな。」

「でも…また攫われたら…。」

「その時はその時です。それともここで彼を見捨てて花月さんを泣かせますか…?」

「そんなつもりじゃ……。」

「皆、手を貸してくれ。」
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「ダメだ…出血量が多すぎる。いくら吸血鬼の体だとはいえこのままじゃ体力がもたない。」

「泰揮、ありったけの血液、倉庫から持ってきた。」


「この血液が効いてくれればいいのですが…。」



「花月、自分の部屋に戻ってろ。」
「でも琉生くんが……。」

「こいつもこんな惨めな姿お前に見られたくないはずだ。それに……こいつは絶対俺らが助けるから……だから、今は部屋にいろ。」


「本当に…助けてくれる…?」
「ああ、必ず。」


「劉磨、こちらで手を貸してください。」
「今行く。……あとで、部屋に呼びに行くから…部屋で落ち着け。」



本当は部屋に戻りたくなんてなかった。琉生くんの側にいてあげたかった。でも、今の私が足手まといになるのは自分でもわかる。




だから———



「わかった。部屋にいる……。」


そうとしか言えなかった。
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