生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―琉生side—

花月ちゃんをだましている気分になるけどこれが1番の策。

廊下を歩いていると悠夜さんと泰揮クンと遭遇した。2人を見るなり立ち止まってしまった花月ちゃん。


「大丈夫…私がいるでしょ。怖いなら…手をつなぎましょ。」


花月ちゃんが嫌がらないようにレースグローブをつけておいてよかった。少しでも男と接する部分を減らせる。


「どこに行かれるのですか…?」

「ルイちゃんと…お庭に出てきます…。」


「そう……夕食までには戻ってきてね。」


「ルイちゃん、行こう。」


僕の手を引いて逃げるように2人の横を通り過ぎる。そのとき僕にだけ聞こえるように悠夜さんが言葉を発した。

「まったく……このような手しかないなど…情けないことです。貴方に頼むなど……。」
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―少し前のこと―

「これから…どうしましょうか。男がダメとなるとかなり難しいわよね。」


「まったくです。彼ら自身に解決させるとしても生活をする上では我々との関りを断つことは不可能です。最低限の会話はできないとまずいですね。」

「そうだわ…アタシが女の子になればいいのよ。」


「女装…ということですか?やめてください。いくら女言葉を使っているといえど貴方の体格は男性です。かえって彼女を不安にさせてしまう。まだ発達しきっていない体でないと……。琉生…できますか?」


「僕が…やるの…?」

「貴方に頼むなど本望ではありませんがこの際気にしてはいられません。」


「ぼ、僕がやるよ。体もそんなに発達してないほうだし…。こいつにやらせるくらいなら…」

「いいよ。僕がやる。ただ…全部僕に任せてほしい。」


「あら、すんなりやってくれるのね。」

「僕は約束したから…花月ちゃんの不安を取り除くって……。」



たとえ僕が男として見られないことでも……僕には何の得にならなくても…彼女のためならどんなことでもやる。
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