生贄の花嫁      〜Lost girl〜
あれから毎日朝と夕方に花束が置かれるようになった。どの花も綺麗に咲いていて大切にしたいから、ルイちゃんに頼んで花瓶を貸してもらうようお願いした。


今もまだ恐怖心はあるけど皆と一緒に食事はとれるようになった。



「今日も来てるよ、花束。」




毎日花瓶を私の元まで持ってきてくれるルイちゃん。今では普通にルイちゃんと呼んでいるし、たまにリハビリで琉生くんに戻るときもある。


「毎日朝晩律義にくれるよね。それを活けてる花月ちゃんも几帳面だと思うけど。」

「大切な命だからね。」

「今日の花は何?」
「エーデルワイス。花言葉は“大切な思い出”。」

「それ活けたらお昼ご飯だって。」

「うん。」
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「今日のメインは鴨ロースよ。付け合わせのパンは好きなのをそれぞれとってね。」

「わーい!いっただっき…」

「ルイ…お行儀が悪いですよ。今はレディーなんですから隣に座っている花月さんを見習いなさいといつも言っているでしょう。」



たしかにルイちゃんはいつも言われている。琉生くんがルイちゃんになってからもうそんなに経つんだ。


「今日は泰揮と奏は買い物、聖は庭の手入れをお願いします。劉磨は私が夏休みの宿題を見てあげます。」

「毎年毎年なんでお前に…。」

「それはいつも貴方が夏休み明けのテストで赤点をとるからです。今年こそはクリアしていただきたい。」



「じゃあ私は、今日も花月ちゃんを独り占めするね。」
「ほんと、生意気。小学生の分際で…。」

「しょうがないでしょ…私、かわいいんだから。」
「……。」


本当、ルイちゃんはなんで私に付き合ってくれるんだろう…。


「あ……。」
「どうぞ…。」


目の前の皿に盛られているパンをとろうとしたら聖さんと手が触れた。久しぶりに顔を見る。聖さん…少し痩せた気がする。


「あの…ごちそうさまでした。」


なんとなく気まずくなってしまい席を立った。前よりは目を合わせられるようになったけど逃げようとする自分がいる。
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