生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―琉生side—

「聖、大丈夫ですか…?」

「あ、ああ…。」



「ああ、もうイライラする。」

花月ちゃんがいなくなったことを確認しウィッグをとる。最初はかわいいって思ってたけど熱いし重いし疲れる。花月ちゃんのためだからって思ってるけど…


「なんで全然進展ないの。僕がこの格好をするようになってから1週間は経つよね?それなのに毎日花だけ送って、廊下で鉢合わせないように時間ずらして避けてるのかと思えば、ご飯の時にはずっと見つめてて本当何なの?謝るなら謝って早く仲直りしてよ。」

「また同じことが起きないか怖いんだ……。これ以上花月に嫌われたくない。今のままでなら恋人……は無理でも友達では…いてくれるかもしれないから……。」


「あのねえ、花月ちゃんは聖さんのこと嫌ってない。毎日毎日あんたからもらったってわかってる花を大切に活けてる。本当に嫌いならとっくに捨ててるよ。悠夜さんと泰揮さんは2人の力で解決してほしいみたいだけど、こんな鈍感でのろまだともう限界。だから僕が聖さんと花月ちゃんを会わせる。」


「そんなことしたら…。」

「少しは男見せてよ。花月ちゃんのこと大好きなんでしょ?こんなことで諦めていいの?男を見せるなら今でしょ。」

「……。」

「じゃなきゃ、僕がこんなことしてたのバカみたいじゃん。花月ちゃんのことを好きな奴のために、自分は男としてのアピールができない格好をしてさ……。本当に好きなら言えるだろ。謝罪の言葉も……愛の言葉も。」


「………こんな子供に気づかされるだなんてな…。」

「あとでタイミング作ってあげるから正直にちゃんと言ってよ、花月ちゃんに。」

「わかった。俺…やってみる。」
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―聖side—


前に人に謝ったのはいつだろう。そもそも俺はそういうことに遭ったことがあるのか…?俺は…喧嘩をしてバラバラになって戻れなくなるのが怖かった。喋らなければ相手を傷つけることもないし優しい人でいればずっと一緒にいられるいい人になれる。


花月のために今までたくさん花束を贈っていた。すべての花に言葉と気持ちを込めて。


《あんたからもらったって分かってる花を大切に活けてるよ。本当に嫌いならとっくに捨ててるよ。》


この花束を最後にしよう。俺は口下手で話すのが苦手だ。だからこの最後の花束に俺の気持ちを……全部包み込む。

これでダメだったらきっぱり諦める。



コンコン

「来たよ。準備はできた?」

「ああ……。」
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